News Release

ケトン体合成にミトコンドリア保護作用があることを発見

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

ケトン体合成不全マウスは生後早期に脂肪肝を呈す&#12427

image: HMG-CoA Synthase 2(HMGCS2)の遺伝子を欠損させたケトン体合成不全マウス(下段)では、新生仔期より著しい脂肪肝になる。 view more 

Credit: Dr. Yuichiro Arima

熊本大学の研究者グループは、ケトン体合成不全マウスを作製・解析し、ケトン体合成にミトコンドリアを保護する作用があることを確認しました。ケトン体は飢餓状態における代替エネルギー源ですが、新生児期は栄養状態に関わらずケトン体合成が活発になっています。今回、ケトン体合成にミトコンドリアの機能を維持して保護する作用があることが分かりました。今後この作用を利用してミトコンドリア保護や臓器保護を目的とした治療応用が期待されます。

ケトン体はブドウ糖や脂肪酸とともに、エネルギー源として利用されることが知られている代謝産物です。ケトン体は特に、飢餓状態における代替エネルギー源であることが知られています。しかしながら、新生児期においては母乳の摂取量にかかわらずケトン体合成が活発になっていることが確認・報告されており、その役割については分かっていませんでした。

今回の研究では、ケトン体を合成する際に重要となる酵素である、HMG-CoA Synthase 2(HMGCS2)の遺伝子を欠損させたケトン体合成不全マウスを作製し解析した結果、ケトン体ができない状態では、新生仔期より著しい脂肪肝となることが分かりました。

そこで、ミトコンドリアに注目した解析を行うと、クエン酸サイクルを中心とした、ミトコンドリアにおける酵素反応が障害されていることが確認されました。クエン酸サイクルでは、食事によって得られた栄養素がアセチルCoAに変換され、さらにクエン酸と7 種類の酸への変換を繰り返すサイクルの中でエネルギーが作り出されます。機能障害の原因を検索した結果、ケトン体合成不全により基質であるアセチルCoAが蓄積し、ミトコンドリア内のタンパク質にアセチル化というタンパク修飾を過剰に加えることで機能を障害していることが確認されました。

研究を主導した有馬勇一郎助教は次のようにコメントしています。 「一連の研究結果は、生後授乳に伴って脂肪酸の摂取が急速に増える状態において、通常の状態ではケトン体合成が活発になることが、ミトコンドリアタンパクに過剰なアセチル化修飾が加わることを防止し、ミトコンドリアの機能を維持して保護する作用を持つことを示しています。今後この作用を利用してミトコンドリア保護・臓器保護を目的とした治療応用が期待されます。」

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本研究成果は、「Nature Metabolism」に令和3年2月18日 (日本時間) に掲載されました。

Source: Arima, Y., Nakagawa, Y., Takeo, T., Ishida, T., Yamada, T., Hino, S., � Tsujita, K. (2021). Murine neonatal ketogenesis preserves mitochondrial energetics by preventing protein hyperacetylation. Nature Metabolism. doi:10.1038/s42255-021-00342-6


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