News Release

ウコンの精油成分由来の化合物が神経保護作用を示す新たなメカニズムを解明

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

Effects of ar-turmerne derivatives on IFNγ/LPS-induced dopaminergic neurodegeneration in rat midbrain slice cultures

image: <p>A: Immunostained images of tyrosine hydroxylase (TH), a dopaminergic marker, in midbrain slice cultures co-treated with IFNγ/LPS and ar-turmerone derivatives. (Scale bar: 100 micrometers) </p> <p>B: Quantitative analysis of dopaminergic neuron count. </p> <p>C: Quantitative analysis of NO production from midbrain slice cultures. (* p < 0.05, *** p < 0.001 vs. control, ### p < 0.001 (n = 6-9, one-way ANOVA, followed by a post hoc Tukey test)) </p> view more 

Credit: Associate Professor Takahiro Seki

熊本大学の研究者らは、ウコンの精油成分の一つ「ar-turmerone」とその誘導体がパーキンソン病モデルの培養組織に対し、ドパミン神経に直接作用することで神経保護作用を示すことを発見しました。また、そのメカニズムとして、細胞の抗酸化能を高めるNrf2が活性化することを発見しました。今回同定したar-turmerone誘導体が、新規パーキンソン病治療薬として活用されることが期待されます。

パーキンソン病は、中脳の黒質から線条体に投射(情報伝達)するドパミン神経が選択的に死滅し、作られるドパミンの量が減少することが原因の神経変性疾患です。手足の震え(振戦)、無動、筋固縮などの運動障害が症状として見られます。現在、減少したドパミンを補充するなどの対症療法が行われていますが、ドパミン神経変性を抑制する治療薬は臨床応用されていません。

これまでの研究で、パーキンソン病患者の中脳の黒質では、脳内の免疫機能を担う細胞「ミクログリア」の活性化による炎症反応が観察されることや、ミクログリア活性化を誘導するとドパミン神経の変性が誘導されることが報告されています。また、中脳の生体内での状態を模した実験(中脳切片培養)でミクログリア活性化を誘導すると、黒質のドパミン神経が選択的に変性することや、その神経変性に活性化ミクログリア由来の一酸化窒素(NO)が関与することも報告されています。以上のことから、ミクログリアの活性化による炎症反応がパーキンソン病におけるドパミン神経変性に関与しており、ミクログリアに対する抗炎症作用を有する化合物はドパミン神経変性を抑制すると考えられています。

そこで、熊本大学の研究グループは、抗腫瘍作用やミクログリアに対する抗炎症作用を示すことが報告されている、ウコンの精油の主要成分ar-turmeroneについて解析を行いました。研究の目的は、(1)ar-turmeroneが抗炎症作用を介してドパミン神経変性を抑制するかどうかを解明すること、(2)ar-turmeroneに構造が近い化合物で、ar-turmeroneよりも抗炎症作用やドパミン神経保護作用が強い化合物(誘導体)を同定すること、の2点とし、ミクログリア細胞株であるBV2細胞や中脳切片培養を用いた解析を行いました。

Ar-turmeroneは不斉炭素を持ち、天然では全て図1A のような構造で存在しています(S-Tur)。このS-Turを基に合計8つの類縁体を作製し、リポ多糖(LPS)*4刺激により誘導されるBV2細胞の活性化による炎症反応に対する抑制作用を指標に、S-Turよりも強い抗炎症作用を示す類縁体の同定を試みました。その結果、(R)-ar-turmerone(R-Tur、図1B)、ar-atlantone(Atl、図1C)、analog 2(A2、図1D)がS-Turよりも強い抗炎症作用を持つ類縁体として同定されました。

続いて、S-Turを含むこの4化合物が、ドパミン神経の変性に対して抑制効果を示すかを検討するために、インターフェロンγ刺激*5及びLPS刺激(IFN-γ/LPS)によりミクログリア活性化を誘導した中脳切片培養を観察しました。すると、これら4化合物は全てIFN-γ/LPSで誘導されるドパミン神経数の減少を有意に抑制しました(図2A,B)。しかし、活性化ミクログリアから放出されドパミン神経変性に関わるNOの産生は全く抑制されませんでした(図2C)。また、S-Tur、Atl及びA2の3化合物は、ミクログリア活性とは関係なくドパミン神経を選択的に障害する毒素であるMPP+ *6が誘導するドパミン神経変性を抑制しました。以上の結果から、S-Tur及びその誘導体であるAtl、A2は、ドパミン神経に直接作用し、神経保護効果を示すことが解明されました。さらに、ドパミン神経前駆細胞株や中脳切片培養を用いた解析から、Atl及びA2の神経保護作用は、細胞の抗酸化能を高める転写因子であるNrf2の活性化を介していることが明らかとなりました。

研究を主導した関貴弘准教授は次のようにコメントしています。

「本研究では、ar-turmerone及びその誘導体が、既に報告されているミクログリアに対する抗炎症作用とは関係なく、中脳切片ドパミン神経を直接保護する、という新たなメカニズムを解明したものです。特に、Atl及びA2という2種類の誘導体はNrf2の活性化を介して、抗酸化タンパク質の発現を増大することで、神経保護作用を示すことを示したものです(図3)。本研究で同定した類縁体A2はNrf2を強力に活性化するため、強い抗酸化作用を示すことが想定されます。この化合物はドパミン神経保護薬として新規パーキンソン病治療薬としての応用も考えられますが、肝疾患や腎疾患など酸化ストレスを原因とする多くの疾患の治療に応用することも期待できます。」

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本研究成果は、科学誌「Cells」(MDPI出版社)に令和3年5月3日に掲載されました。

Source:

Hori, Y., Tsutsumi, R., Nasu, K., Boateng, A., Ashikari, Y., Sugiura, M., ... Seki, T. (2021). Aromatic-Turmerone Analogs Protect Dopaminergic Neurons in Midbrain Slice Cultures through Their Neuroprotective Activities. Cells, 10(5), 1090. doi:10.3390/cells10051090


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