細胞から個体まで、生物のシステムは極めて高度な機能を持っている。例えば犬などは極めて微量の匂いを探知できることが知られているが、この様な環境の化学分子(匂い)を認識・探知するシステムは大腸菌などの単細胞にも備わっている。しかし、生体の匂い探知システムがどこまでよくできているのか、例えば物理的法則で規定される探知限界などを達成し得るのかについては、十分に明らかにされていなかった。
東京大学 大学院情報理工学系研究科 博士課程1年の中村 絢斗 大学院生と同 生産技術研究所の小林 徹也 准教授は、最適化理論の一種である最適フィルター理論を用いることで、大腸菌の匂い探知システムが物理的・情報理論的に最適な感知を実現するために必要な構造を有することを初めて示した。また理論により予測されるフィードバック制御関数形状が、実験計測とほぼ一致することを見出した。この結果は、大腸菌の匂い探知システムが物理的・情報論的限界を達成しうる構造を持つことを示唆するものであり、本手法は生体システムが持つ様々な機能の最適性を調べる理論的基礎となる。
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本研究成果は、2021年3月23日にAmerican Physical Societyによる「Physical Review Letters」に掲載された。
Journal
Physical Review Letters