研究者らは、最近のエボラアウトブレイクの生存者から抗体の確実な収集を行ってきたが、一部の抗体がマウスにおいてウイルスに対する特に強力な中和能を有することが分かった。これらの抗体は、ウイルスの特定の膜蛋白質のストーク領域を標的としており、エボラと闘うための新たな治療薬をもたらす可能性がある2014年のザイールでのアウトブレイクの生存者1人から採取された血漿において、感染の3ヵ月後にウイルスに対して特に強い免疫応答が認められたため、Zachary Bornholdtらはこのドナーの免疫系を詳細に分析した。その結果、病原体を「記憶」するドナーのB細胞から、エボラを中和する働きを持つ349の抗体が分離された。次いで研究者らは、これらの抗体について、エボラウイルスの表面を覆っている糖蛋白質をどのように標的としているかを詳細に調べ、標的とする糖蛋白質の領域に基づいて抗体を分類した。その結果、糖蛋白質のストーク領域を標的とする抗体が、ウイルスに対する特に強力な中和能を持つことが明らかになった。次いでBornholdtらは、これらの抗体の様々なカクテルを作成して、エボラに感染して2日後のマウスにおける有効性を試した。すべての抗体カクテルのうち、ストーク領域を標的とする抗体グループを含んだものが、曝露後の防御能が最も有意に高く、生存率は60~100%の範囲であった。これらの結果から、将来エボラの糖蛋白質のストーク領域を標的とする治療薬が、ウイルスを中和する効果的な手段となる可能性が示唆される。
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