News Release

水循環の数値モデルの欠損ピース

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

これまで地球システムモデルにおいて多くの場合で見過ごされてきた過程が、大規模な土壌水分の蒸発と植物による水分の蒸散に今まで仮定されていた以上に寄与しており、今後地球の水循環を定量化する上で鍵となる可能性があることが、新しい研究から明らかになった。地球システムモデルとは、気候変動予測等に用いられる数値モデルのことで、気温や降雨量、大気の循環といった気候に直接関係する要素のみでなく、陸地と海洋の炭素循環や大気中の化学反応過程、氷床の動態といった地球上の様々な過程の相互作用を扱う非常に複雑な計算を伴うシミュレーションモデルである。今回の結果は、既存の手法では得られなかった水循環の複雑な相互作用に関する見識を提供している。蒸発散(ET)とは、土壌からの水分の蒸発(E)と植物からの水分の蒸散(T)の合計量を指し、地球の水循環において非常に重要な役割を担っている。しかし、Tの値は植物活動に依存する一方で、Eの値は土壌表層の水分量に依存しており、物理的要素を表す各変数に対してそれぞれ異なった応答を示す。地表面下から河川等の排水経路への水の動き(つまり、水平方向の地下水流)といった、既存の水循環モデルでは考慮されていない変数が、TとEにそれぞれどのような影響を与えるのかについて、研究者による議論が最近になって重ねられている。今回Reed MaxwellとLaura Condoは、水平方向の地下水流を考慮した場合とそうでない場合について、地下水流と地表面水流の両方を考慮するモデルを利用して、北米大陸の主要な河川流域について水収支のシミュレーションを行った。今回のモデルシミュレーションでは、1時間毎で1年間分の計算が行われた。シミュレーションの結果、水平方向の地下水流は蒸散に特異的な水源を追加的に供給していることが明らかになった。実際、蒸散が土壌水分の蒸発量の30倍となるケースもあった。これは地表面付近の土壌が乾いた後も、土壌のより深い部分の水分を植物が吸収できるためではないか、と研究者らは提案している。今回の結果は、特に地下水の水位の変化がより顕著になるにつれ、水平方向の地下水流を地球システムモデルに取り込むことが重要になってくることを示唆している。

###


Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.