News Release

高伝導性と電気化学安定性を兼ね備えたナトリウム固体電解質

長期安定な全固体ナトリウムイオン二次電池の開発に向けて

Peer-Reviewed Publication

Toyohashi University of Technology (TUT)

Crystal structure of Cl-substituted Na3SbS4 with ion diffusion pathway

image: Visualization of three-dimensional ion diffusion pathway (yellow section) and crystal structure of Cl-substituted Na3SbS4 view more 

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<概要>

豊橋技術科学大学電気・電子情報工学系の研究チームは、全固体ナトリウム(Na)イオン二次電池用の固体電解質として、塩素(Cl)置換したNa3SbS4を開発しました。硫黄(S)の一部をClで置換したNa3SbS4固体電解質は、Cl置換なしの試料と比較して、室温におけるイオン導電率が3倍まで向上しました。またCl置換したNa3SbS4の結晶構造は、Naイオンが3次元的に移動しやすい結晶構造フレームワークを持つことを実証しました。加えて、Cl置換はNa負極に対して優れた安定性を示すことを見出しました。

<詳細>

大規模なエネルギー貯蔵に対する需要の高まりにより、低コストかつ埋蔵量の豊富なNa資源を用いた全固体Naイオン二次電池の研究が加速しています。全固体Naイオン二次電池の実用化には、室温で高いイオン伝導性を示す固体電解質の開発が必要不可欠です。Na固体電解質の中でも、Na3SbS4固体電解質は、室温で1 mS cm-1以上の高い導電率を示すことから、国内外で広く研究されています。しかしながら、その高い導電率の達成にはボールミリング処理による後処理が必要であり、より簡易的な合成プロセスで高いイオン導電率を実現することが重大な課題でした。

そこで、研究グループは量産に適した液相合成法を用いて、Cl置換したNa3SbS4固体電解質を開発しました。Na3SbS4固体電解質のSの一部をClで置換することで、置換なしの試料(0.3 mS cm-1)と比べて、室温でのイオン導電率が3倍(0.9 mS cm-1)に向上しました。また、Cl置換に伴う構造変化が伝導特性に与える影響を解明するために、イオン伝導経路を可視化しました。その結果、Na3SbS4中のSの一部をClで置換することで、NaイオンがS(またはCl)と局所的に緩く結合した、つまりNaとS(またはCl)の間で弱い静電相互作用を持つ結晶構造フレームワークが形成され、特に結晶学的なc軸方向へのイオン拡散が促進されることを実証しました。したがって、Cl置換に伴うイオン導電率の向上は、3次元的に開けたイオン拡散経路を持つ結晶構造が形成したことに起因します。

さらに、Cl置換したNa3SbS4固体電解質は、Cl置換なしの試料と比べて、Na負極に対して優れた安定性を示すことを見出しました。この電気化学的な安定性の改善は、負極と固体電解質の間の界面抵抗の低減に繋がり、Clの多量添加は負極に対する安定性の改善に効果的であることを実証しました。

<今後の展望>

研究チームは、高イオン伝導性や優れた電気化学的な安定性など望ましい特性を備えた理想的な固体電解質の開発に向けて、重要な設計指針を見出しました。また、本研究で開発した固体電解質と液相コーティング技術を組み合わせることにより、全固体Naイオン二次電池の高い蓄電容量および安定なサイクル特性を達成できると考えています。

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<論文情報>

Hirotada Gamo, Nguyen Huu Huy Phuc, Hiroyuki Muto, and Atsunori Matsuda, Effects of Substituting S with Cl on the Structural and Electrochemical Characteristics of Na3SbS4 Solid Electrolytes, ACS Applied Energy Materials, (2021). doi.org/10.1021/acsaem.1c00927


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