News Release

光と熱で液体と固体を行き来する新たな物質を開発

Peer-Reviewed Publication

Kobe University

The Chemical Structure (Above) and Appearance (Below) of the Ionic Liquid and Coordination Polymer

image: The ionic liquid is clear and colorless, but when exposed to ultraviolet light, the bonds between ruthenium and benzene rings are dissociated and replaced by a structure in which cyano groups link with the ruthenium ions, transforming it into a yellow solid. This solid reverts to the original liquid when exposed to heat. view more 

Credit: Kobe University

神戸大学理学研究科の持田智行教授と舟浴佑典博士(現・山口東京理科大学)らの研究グループは、光を当てると固体に変化し、加熱すると液体に戻る金属錯体物質を世界で初めて開発しました。今後、再利用可能なプリント基板材料などへの応用が期待されます。この研究成果は、5月7日(日本時間)に英国の化学誌「Chemical Communications」に掲載されました。

配位高分子※1は、さまざまな機能を持たせる事のできる機能性固体として知られています。近年盛んに研究が行われ、多くの合成方法が開発されていますが、そのほとんどが溶液中の化学反応によるもので、液体に光を照射して配位高分子を生成する方法は、これまで例がありませんでした。

物質の性質を光や熱などの外部刺激によって制御する技術は、エレクトロニクス材料分野において非常に重要です。例えば、プリント基板などの作成に用いられる技術では、光を照射することで固まる性質をもつ材料(感光性樹脂)が用いられていますが、一度使用すると再利用が困難という課題がありました。

持田教授らの研究グループは、金属イオンと有機分子の結合を光や熱で可逆的に制御できれば、外部刺激によって性質が大きく変化する材料が実現すると考え、シアノ基を導入したルテニウム錯体からなるイオン液体※2を世界で初めて開発しました。この液体は、無色透明で揮発性がなく、マイナス50度でも凍らずに液体として存在します。紫外光を数時間照射すると配位高分子固体に変化し、130度で1分間加熱すると再び元のイオン液体に戻るという特徴があります。

このように、光と熱によって、イオン液体と配位高分子固体という全く異なる結合状態と化学的性質を持つ物質間での可逆的な相互転換を実現しました。

今回の研究により、再利用が可能な光硬化性液体の開発に成功しました。プリント基板や光造形、接着剤用途などへの応用が期待されます。持田教授は、「今後さらに分子設計をすすめ、生成した配位高分子にガス吸脱着能などの機能性を持たせる研究に取り組みたい」と話しています。


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