脳卒中後のリハビリ中に神経可塑性を促進する薬剤を使用すると運動機能の回復が改善されたことが、マウスとサルを用いた新しい研究で報告された。また、早期臨床試験では、この薬剤がヒトに対して安全であることが示唆されている。脳に損傷を与える脳卒中の後、ニューロンは自然に脳内で「配線し直す」。これは、可塑性と呼ばれる適応反応であり、これによって人は、運動や発話などのいくつかの機能を回復できる。脳はリハビリによってある程度自然に配線し直せるが、脳の可塑性を促進し回復を改善する承認薬は現在ない。可塑性と学習に何らかの役割を果たしていることが知られているタンパク質として、CRMP2がある。今回、Hiroki Abeらは、CRMP2を標的とする低分子、edonerpic maleateが、どのようにして脳卒中後の運動機能回復を促進するのかを検討した。餌のペレットを取るために手を伸ばさねばならない課題ができるようにマウスを訓練し、脳卒中後にどの程度うまくマウスが課題を行えるか検討して、edonerpic maleate、リハビリ、脳の可塑性に影響を与えない対照物質のさまざまな組み合わせを解析した。リハビリと併用してedonerpic maleateを投与すると、マウスが手を伸ばす課題を遂行する能力が有意に促進された(ただし、薬剤のみでは促進されなかった)。Abeらは、手を伸ばしてつかむ課題ができるよう訓練したサルを用いて同様な実験を行った。脳卒中後、edonerpic maleateを投与したサルは、対照群と比較して運動機能の回復が早く、edonerpic maleateの投与は、リハビリの後期段階の多くの労力を要する運動機能の回復に特に有用であった。Simon Rumpelが、関連したPerspectiveでさらに詳しく述べる。
###
Journal
Science