米国における百日咳の重度の驚くべき復活が説明できたようである。百日咳は、細菌性病原体百日咳菌（Bordetella pertussis）により生じ、世界（主に発展途上国）で毎年約195,000例の乳児の死亡を引き起こしている。しかし、1940年代以降ワクチン接種の取り組みが行われているにもかかわらず、1970年中ごろから先進国で驚くべき死亡数の上昇が生じている。この現象をより深く理解するため、Matthieu Domenech de Cellèsらは、16年間（1990～2005年）の詳細な情報を提供できるアクティブサーベイランスプログラムが行われているマサチューセッツ州の年齢特異的百日咳発生記録を用いて、数学モデルを作成した。可能性のある以下の3つのシナリオが評価された。一次性ワクチン効果不全（一部の人で、免疫化による防御が完全に失敗した）、効果持続期間の不全（最初はワクチンが十分に効果を示したが時間の経過とともに防御能力が低下した）、効果の程度の不全（おそらく細菌が進化したために防御効果が不完全となった）。青年と成人が大半の症例を占めるマサチューセッツ州の発症データに基づき、米国のこの地域における百日咳復活を最もよく説明できるのは、効果持続期間の不全（すなわちワクチンの効果低下）であることが示された。Domenech de Cellèsらは、ワクチンが免疫を誘発できなかったためではなく、これまでの成人に対する不完全なワクチン接種率とワクチンの防御力の低下が組み合わされたことが、疾患復活のおぜん立てをしたと結論付けた。さらなる解析で、学齢児童が特に重要な伝染拠点となっており、将来のワクチン接種の取り組みの良好な対象となり得ることが明らかになった。
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Journal
Science Translational Medicine