母親のHIV感染は、HIVに曝露されたが感染はしていない赤ちゃんの腸マイクロバイオームの発達を阻害しうるが、このことが、これらの乳児が死亡しやすく病気に罹患しやすい理由を説明できる可能性があることが研究で示された。50組のハイチの母子を対象として行われたこの研究では、これらの乳児のマイクロバイオーム崩壊とHIV陽性母の母乳組成の変化との関連性が示された。この知見は、プロバイオティクスやプレバイオティクスを用いて正常なマイクロバイオームの発達を助けることで、これらの高リスク乳児を治療する道を拓くと考えられる。世界中で、HIV曝露非感染乳児が、HIV陽性の母親のもとに毎年百万人以上誕生しており、この乳児数は増加し続けている。抗レトロウイルス療法によってHIV母子感染は成功裏に予防できているが、HIVに曝露されたが感染はしていない赤ちゃんは罹患リスクが高く、死亡リスクは曝露されていない非感染乳児よりも約2倍高い。この健康不良の背後にある理由は不明なままである。Jeffrey Benderらは、腸マイクロバイオームが犯人であるという疑いを持ち、ハイチの赤ちゃんとその母親(半数がHIV陽性、半数はHIV陰性)50組のマイクロバイオームを比較した。感染した母親と感染していない母親の腸微生物叢はほぼ同様であったが、その子の腸微生物叢には印象的な差が認められた。HIV曝露非感染乳児の腸マイクロバイオームは多様性が低くあまり成熟しておらず、微生物コミュニティの組成が異なっていた。さらに、HIV感染母と非感染母の母乳中のオリゴ糖(母親が子に微生物を受け渡す重要な経路の1つ)の組成が異なっていた。オリゴ糖は、母乳中の消化できない炭水化物であり、「善玉」腸内細菌の増殖を促進するプレバイオティクスとして働くと考えられている。まとめると、この知見は、乳児の腸マイクロバイオームの崩壊を防ぐことが、HIV曝露非感染乳児の健康を改善する方法となる可能性があることを示唆している。
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Journal
Science Translational Medicine