News Release

溶存イオン溶質分析の濃縮による感度を向上させる手法をの開発

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

水中の溶存イオン検出感度の向上

image: 分析機器へ導入前にインライン電気透析法によって濃縮することで,溶存イオンの検出感度が向上できる。 [Reprinted from Talanta, 180, Shin-Ichi Ohira, Takayuki Yamasaki, Takumi Koda, Yuko Kodama, and Kei Toda, Electrodialytic in-Line Preconcentration for Ionic Solute Analysis, 176-181, (April 2018) with permission from Elsevier. doi: 10.1016/j.talanta.2017.12.054] view more 

Credit: Dr. Shin-Ichi Ohira

熊本大学の研究者が、河川や湖沼、水道水などに溶け込んでいるさまざまな溶存イオンの分析システムの感度を改善する、新しい方法を開発しました。河川水や水道水のクオリティーは地域社会の健康維持において重要です。このような水中の不純物は質量分析計などの高感度機器によって計測されます。しかし、発展途上国における分析や少量の試料の分析の場合には,コストの面で課題が残ります。そうした場合、より一般的な分析システムの感度向上のために、濃縮プロセスが用いられます。

飲料水中の微量な溶存イオンの検出限界(検出可能な最小濃度)は、少なくとも数マイクログラム/リットル(1マイクログラムは1/100万 グラム)でなければならず、様々な工業プロセスで使用される超純水の場合にはさらに低くなります。微量イオンの分析感度の改善には、濃縮して溶存イオンの濃度を増加させて測定器へと導入する必要があり、濃縮には溶媒を加熱や窒素吹きつけにより蒸発させたり,重金属イオンの場合には共沈や沈殿の後に微量の酸に溶解させたり,液液抽出や固相抽出、電気透析などの方法があります。

今回、研究者らは電気透析によるインライン濃縮法を使用しました。この方法だと、試料溶液の流量がアクセプター溶液、すなわち分析器に導入する溶液の流量よりも大きい場合、イオンが定量的に移動することで、移動したイオンはアクセプター溶液において濃縮されます。しかも,サンプル溶液(Fs)の流量がアクセプター溶液(Fa)の流量よりも大きいとき、濃縮率は2つの流量の比(Faが0でない場合)に等しくなり、しかもわずか数秒でイオンが濃縮されることがわかりました。

この濃縮方法を種々のイオン種に対して検証したところ、イオンクロマトグラフィーシステムの検出限界は、Fs/Fa=10の流量比のときに,無機陽イオンで約1/10、Fs/Fa=50の重金属イオンで約1/50に向上しました。フローインジェクション分析(FIA)システムにおいても、流量比に応じた検出限界の向上が見られました。本手法により、あらゆる分析システムのイオン検出感度を改善することが可能であることが示されました。

また、この電気透析濃縮プロセスを用いて、日本の水道水で飲料水の塩素化によって生じる副産物で毒性の高い、クロロ酢酸(MCAA)、ジクロロ酢酸(DCAA)、およびトリクロロ酢酸(TCAA)を、液体クロマトグラフのUV検出器を用いて評価しました。定量的な溶存イオンの抽出には、強酸の場合よりも比較的高い電圧が必要でしたが、水道水中のこれらのイオンを、流量比10において平均して9.8倍に濃縮することができました。

研究を主導した熊本大学の大平慎一准教授は次のようにコメントしています。

「この処理が数秒で完了できるというのは大きなポイントです。近い将来、この前処理法が自動化されたシステムに実装されることを期待しています。」

本研究成果は論文誌「Talanta」に2017年12月18日に掲載されました。

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[Reference]

Ohira, Shin-Ichi, Takayuki Yamasaki, Takumi Koda, Yuko Kodama, and Kei Toda. “Electrodialytic in-Line Preconcentration for Ionic Solute Analysis.” Talanta 180 (April 2018): 176–181. doi:10.1016/j.talanta.2017.12.054

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