News Release

不斉合成のための合成酵素の開発

高度な不斉反応触媒活性を有するシンコナアルカロイドスルホンアミド型高分子

Peer-Reviewed Publication

Toyohashi University of Technology (TUT)

Fig. 1

image: Structure of cinchona sulfonamide polymer. view more 

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生体内で必要とされる様々な化学反応を行うために酵素が活躍しています。酵素は、タンパク質であり分子量の大きな巨大分子(高分子)化合物です。酵素は基質分子を間違いなく取り込み、反応を触媒し、生成物を放出する、という重要な働きを担っています。このような働きを実現するためには、触媒である酵素が巨大分子であることが極めて重要です。このような観点から、合成高分子であって高度な触媒活性を有する分子(合成酵素)の開発は、ファインケミカル合成分野で欠かせない技術であるはずですが、これまでにこのような合成高分子触媒の合成法そのものがほとんど研究されていませんでした。本研究では、一つの不斉反応に焦点をしぼり、その反応を効率よく触媒することのできるキラル高分子不斉触媒の開発に取り組みました。

シンコナアルカロイド誘導体が、多くの不斉反応の触媒として有効に働くことが知られているので、これを高分子の繰り返し単位として高分子主鎖構造中に組み込むことができれば、高分子不斉触媒のもっとも単純な形としてのキラル高分子を得ることができます。これまでにシンコナアルカロイド類の高分子化または高分子主鎖への組み込みついては報告例がありませんでした。本研究では、シンコナアルカロイドの持つ多彩な官能基を巧妙に利用して触媒活性部位を全く損なうことなく、高分子主鎖構造に組み込むことに成功しました。この高分子化のキーとなる反応は、溝呂木‐Heck反応です。溝呂木‐Heck重合法の開発により、初めてシンコナスルホンアミド型高分子を合成することができました。

得られたキラル高分子が触媒として働くかどうかが重要です。本研究では、実際に酸無水物の非対称化反応にこのキラル高分子を用いたところ、非常に高い触媒活性を示すことを明らかにしました。この高分子は通常の有機溶媒に溶けないため、反応後に回収することが極めて容易で、回収した高分子は触媒として何度でも使うことができます。将来的には、カラムに充填して原料化合物をその中に流すだけで、連続的に有用な生成物を連続的に取り出せるフローシステムへの応用が可能です。

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ファンディングエージェンシー:

JSPS KAKENHI Grant Number JP15H00732, JP15K05517


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