分断化されたパッチ状の生息地に生息する植物の分散が、急激な進化によって促進されることが新しい研究で明らかになった。気候変動が深刻化するなか、外来種の侵入と生息域の分布の移動が、自然の生態系と管理された生態系の両方にとっての2大脅威となっているにもかかわらず、地形を超えた生物種の分散の生態学的および進化学的過程の科学的な理解は限られたものしか存在しない。この過程の理解を深めるために、Jennifer Williamsと共同研究者らはシロイヌナズナ(学名:Arabidopsis thaliana)の個体群を鉢に植え、鉢の間隔がシロイヌナズナの種子の平均的な散布可能距離より0倍(つまり、連続した地形)、4倍、8倍あるいは12倍となるように配置した。シロイヌナズナが6回目の世代交代が終えたところで、研究者らは遺伝子解析を行い、各検体植物の進化速度を特定した。その結果、間隔がない連続的な地形では、進化がより速い植物はそうでない植物よりわずかに11%遠くに分散していたことがわかった。その一方で、周辺環境が「パッチ状」(例えば、植物の個体群間の間隔が12倍)の場合、進化過程にある植物はそうでない植物に比べて3倍も遠くに分散していたことがわかった。興味深いことに、間隔が4倍、8倍、12倍と異なっていても、遺伝子型はさほど変わっておらず、代わりにパッチ状の環境は、種子をより遠くに散布することが出来る背が高い植物と相互関係にあることがわかった。そのため、より急激な進化(今回のケースではより背が高く、種子をより遠くまで散布できる植物への進化)が進むと、シロイヌナズナの分散が促進される。しかし、地形のパッチ形状によって種子のより遠くへの散布が直接的に選択されたのか、あるいは散布と関連はあるが今回測定されなかった特性を通して間接的に選択されたのかは謎のままである、と著者らは語っている。
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