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2つの研究でデカン・トラップの火成活動の時期と恐竜絶滅への影響を調査する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

独立した2つの研究で、研究者らは精度の高い別々の年代測定法を用いて、約6,600万年前に地球の生物の大量絶滅を引き起こした一連のイベントの解明を試みた。両研究は、小惑星のみならずデカン・トラップの火成活動が大量絶滅イベントに何らかの役割を果たしたという点では一致しているが、絶滅を誘発するこの火成活動の影響力をどの程度重く見ているかという点では考えが異なる。気候が引き起こす大量絶滅イベントを理解することで、人間が引き起こす現在の気候変動についても理解することができる。地球の生物の歴史は5回の大量絶滅イベントによって中断している。これらの絶滅イベントの中で最も名高いのはおそらく白亜紀末に起きたイベントで、それによって長きに及んだ非鳥類型恐竜の君臨に終止符が打たれた。しかし、何がこの白亜紀 ―― 古第三紀(K-Pg)の大量絶滅を引き起こしたかについては依然として議論が続いている。小惑星か、インドのデカン・トラップ火成活動地域で数千年間にわたって発生した一連の巨大火山噴火か、もしくはその両方か。デカン・トラップでの火山噴火の時期を、特にチクシュルーブ小惑星衝突と比較して、より正確に知ることが、この論争の解決に役立つと考えられる。

Blair Schoeneらはウラン・鉛(U-Pb)年代測定法を用いてデカン・トラップでの噴火を正確に時系列でまとめた。U-Pb年代測定法では、通常は冷えていくマグマの中で形成される鉱物であるジルコンの個々の結晶内のウラン鉛同位体比を測定することで、以前に使用されていた技術よりはるかに正確な年代を割り出すことができる。新たにネジを巻いた時計が正確に秒を刻むように、ジルコンに含有されたウラン放射性同位体は、ジルコンが結晶化するとすぐに崩壊しはじめ、ゆっくりと確実に鉛同位体へと変化する。その速度は分かっている。ゆえに、個々のジルコン内の2つの同位体の現在の比率を使って、誤差±40,000年という精度で年代が測定できる。Schoeneらはデカン・トラップで最も大きく完璧な地層の9つを試料とし、古代の溶岩流の間に挟まった火山灰層と土壌からジルコンを収集した。この方法によって各噴火イベントの年代を決定することができ、その結果、デカン・トラップでは4回の大規模噴火があり、それぞれが約100,000年間続き、大量のマグマと気候変動を引き起こす温室効果ガスが周囲に放出されたことが示された。この結果は、これらの噴火イベントがチクシュルーブ小惑星衝突の数万年前に始まったことを示している。Schoeneらは、デカン高原での噴火で大気中に放出されたメタン、二酸化炭素、二酸化硫黄のせいで地球の気候と環境が激変し、大量絶滅が誘発され、それはチクシュルーブ小惑星衝突のかなり前だったとしている。

Courtney Sprain率いる研究チームは別の地質年代学的技術、アルゴン-アルゴン(40Ar/39Ar)年代測定法を使った。この年代測定法では核放射後に試料が放出した放射壊変起源アルゴンガスを測定する。正確さでは劣るものの、この方法はU-Pb年代測定法の限界に対応できる部分もある。Sprainらは、デカン・トラップの溶岩堆積の大半(75%以上)はK-Pg境界絶滅イベントの約60万年後に噴火したものだと結論付け、これでは絶滅の主要誘因として火成活動の責任を追求するには限界があると述べている。

関係するPerspectiveではSeth Burgessが各研究結果について論じ、2つの異なった方法はどちらもそれぞれの前身より正確で、それぞれが独自に有用だが、それらが同一の地質学的イベントに対して大きく異なる解釈をどのように導き出したのかを中心的に述べている。「より一層優れたデータセットを使うことで溶岩記録をさらに詳しく調査することができ、それによって一部の疑問は解決する。しかし同時に新しい疑問も湧いてくる」とBurgessは書いている。

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