新しい研究によると、ケニアではモバイルマネーサービスであるM-PESAで提供されているデジタル金融サービスを利用することで194,000世帯が貧困から救われ、消費水準も上がり、特に母子家庭ではその効果が大きかったという。発展途上国では銀行の支店や固定電話が少ないのに対し、携帯電話の普及率が高い。これらの要因により携帯電話を使ったモバイルマネーの活用が拡大した。このサービスでは現金を使ってminutesを購入し、それをお金として換えて使うことができる。モバイルマネーをどんどん利用することで人々が短期的に恩恵を受けていること、より広い社会的支援ネットワークが利用できるおかげで収入や健康リスクから自身を守れていることがこれまでの研究で示されている。しかし、モバイルマネーによって消費水準が上がったり、人々を貧困から救えたりしたかどうかは分かっていなかった。今回、M-PESAがケニアの人々の経済生活に及ぼしてきた長期的な影響をより詳しく評価すべく、Tavneet SuriとWilliam Jackは2008~2014年に5回にわたる家計パネル調査を実施し、1,608世帯のデータを収集した。モバイルマネーの利用が増え、それによって約194,000世帯つまりケニア全世帯の2%が極端な貧困から脱するとともに消費も長期的に大きく増加し、母子家庭では平均の2倍の効果が見られた。これらの影響は倹約などの金融行動の変化と職業選択の変化、特に女性が農業から事業へと移行したことによると考えられる。
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