News Release

VRは記憶学習にむいていない!?

ヒトの特徴も考慮した、情報技術開発のために

Peer-Reviewed Publication

Toyohashi University of Technology (TUT)

VR scene

image: VR scene view more 

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<詳細>

豊橋技術科学大学情報・知能工学系日根恭子助教と東京電機大学の研究チームは、バーチャルリアリティ(VR)を用いた記憶学習が、学習を妨げる可能性があることを発見しました。VRは昨今、マルチメディアやエンターテイメントだけでなく、教育の現場などでもその効果的な利用が期待されていますが、今回のような実験を通した科学的検証をもとに、VRの特性を知り、ヒトの特徴も考慮した情報技術開発が求められます。

近年、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)が身近なものになり、多くの人が手軽にVRを体験できるようになりました。VRはユーザの動きに連動して映像が変わるため、高い臨場感を生み、没入感を高めます。そのため、教育場面でも子供の注意を引くため、効率的に学習を進めるための新たなツールとして期待されています。しかし、VRが記憶にとってどのような影響があるか、その科学的検証はなされてきていませんでした。

そこで研究チームは、HMDを用いた実験を実施し、VRの記憶への影響を検討しました。実験で、被験者はVRの中で美術館へ行き、絵画を鑑賞しました。そのあと、絵画についての記憶テストを行いました。VRの体験について、通常のVRと同様にユーザの動きに連動した映像をHMDに映す条件(通常VR条件)と、他人のVRの映像が映る条件(他人VR条件)を設けました。つまり、通常VR条件では、自分で自由に周りを見ることができる一方、他人VR条件では、自分で自由に周りを見ることができませんでした。この2つの条件について記憶テストの結果を比較したところ、通常VR条件の方が、成績が悪くなりました。このことより、VRでユーザの動きに連動して映像が変わることで、記憶学習を妨げる可能性が、世界で初めて明らかとなりました。

その理由として、VRの特性である自由視点によって高められた臨場感や没入感が、脳を疲れさせてしまい、その結果として記憶が妨げられることが考えられます。VRはユーザや子供の興味を強く引く技術であるため、教育ツールなどとしても大いに期待されていますが、このようなVRの特性を考慮した教材づくりをすることが、重要になってくると思います。これからは、これまで以上に、ヒトの特徴も考慮した、情報技術開発も求められると考えられます。

<開発秘話>

 VRの中の美術館は、研究チームで再現し、撮影しました。絵画を鑑賞する静かで、適度な広さの空間を確保するための準備が大変でした。また、10分間の長回しで撮影しました。10分間すべてにおいて、絵画を鑑賞・記憶するために適切な視角を確保する必要があったため、何度も撮りなおしました。努力の甲斐あって、実験のための良いVRが完成しました。

<今後の展望>

 なぜ、VRの中で自分の好きなように周りを見ると、記憶学習が妨げられるか、その原因を突き止めたいと考えています。将来的には、その原因を取り除くことで、よりよい学習ツールとしてのVR使用方法を提案したいと考えています。

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<論文情報>

Hine K. & Tasaki H. (2019). Active View and Passive View in Virtual Reality Have Different Impacts on Memory and Impression. Frontiers in Psychology. 10:2416. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.02416


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