2本の論文により、暗黒物質と暗黒エネルギーの成分を特定するための取り組みが前進した。暗黒物質と暗黒エネルギーは合わせて宇宙の約95%を構成しているが、ほぼ、科学者らの想像に委ねられている。どちらの実験も、実験室レベルの実験で宇宙の発展に関する基本的な疑問をいかにして検討できるかを説明している。最初の論文では、XENON CollaborationのメンバーであるElana Aprileらが、暗黒物質(仮説上の物質であり、その重力の影響を可視物質に与えると推測される存在)の探索について述べている。これまではニュートリノやフォトン等の標準模型粒子に重力作用が影響を及ぼすと考えられていたが、最近は、我々の宇宙を形成するこうした物理的作用に対し、WIMP(weakly interacting massive particles、弱い相互作用をする重い粒子)等の新たな粒子の関与を示唆する研究が増えている。この見解を検証する実験では、これらの暗黒物質粒子の候補がどのように標準的な粒子タイプと相互作用するのかを調べている。例えば、WIMPと標準模型粒子が相互作用したとき、それらの粒子は反跳する荷電粒子を生成する(これらの荷電粒子はイタリアにある地下検出器XENON100等の検出器で可視化される)。そこでAprileらは、この装置(WIMPを標的とする大容量の液体キセノンタンク)を使用して、反跳によるはっきりとした信号を検出した。特定の信号に関する証拠は得られなかったものの、この結果から提唱されていた暗黒物質候補が数種類に限定された。
Paul Hamiltonらは、カメレオン場(chameleon field)と言われる仮説上の力を探索した。このカメレオン場は、暗黒エネルギーの最有力候補の一つであり、宇宙の膨張を促進する力であると考えられている。約10年間、科学者らは物質の波動関数を修正するカメレオン場を探していた。こうしたカメレオン場の源を探索するため、Hamiltonらは光パルス原子干渉計を使用した。彼らの実験は、暗黒エネルギーに関する既存の理論を大幅に絞り込んだ。J�rg SchmiedmayerとHartmut AbeleによるPerspectiveでは、現在の物理学においてもっとも差し迫った問題のいくつかに取り組んでいるこれら2本の論文についてさらに掘り下げて考察している。
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Article #14: "Exclusion of leptophilic dark matter models using XENON100 electronic recoil data," by The XENON Collaboration.
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