News Release

新規の化学遺伝学的ツールセット

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

細胞活動を非侵襲的に制御するためのこの有望な戦略について、ヒトへの応用に少しでも近づけるために改善を試みた研究者らが、FDA承認を受けた禁煙補助薬バレニクリンを用いて低用量でも活性化できるイオンチャネルを遺伝子操作により作製したとしてそのデザインを報告した。この化学遺伝学に基づいたアプローチは、生きたマウスおよびサルで実験が行われた。科学遺伝学の技術により、行動している動物における細胞集団に対して非侵襲的な化学的コントロールができるようになる。この方法は、これまで認識されていない低分子と相互作用する高分子を作製するというプロセスによって可能となる。これまでに、生きた動物において化学遺伝学技術を用いる試みは、効果的に活性化をもたらす分子がないなどの問題点に悩まされてきた。さらに、既存のアプローチはヒトの治療には適さない。ヒトの治療薬として理想的なのは、臨床使用が承認された既存の薬物によって活性化可能な受容体を用いることである。今回Christopher Magnusらは、化学遺伝学システムの改善を試みた。著者らは、化学物質による細胞の活性化および抑制を検討するための、イオンチャネルをベースとした新しいプラットフォームを開発した。次いで、臨床使用されている44の薬物について、このプラットフォームに含まれる変異チャネルを最も効率よく活性化するものがどれなのかを調べた。著者らによれば、禁煙補助薬のバレニクリンの活性効率が、非常に低い濃度でも高かったという。著者らはバレニクリンに修飾を加えてその効力を高めた上で、神経細胞において「ニューロンサイレンサー」としての効果を試したところ、効果が認められた。次いで、このバレニクリンを生きたマウスとアカゲザルの脳内に投与したところ、この薬物がニューロンに作用して行動の変化をもたらした、と著者らは報告した。この研究は、薬物とイオンチャネルの組み合わせを用いる著者らのアプローチにより、ニューロンの活性化と抑制の両方が可能であり、これにより行動に影響を及ぼし得ることを示す原理証明(proof of principle)実験である。著者らは、今回開発したプラットフォームにより、ヒトにおいてトランスレーショナル研究が可能になる、と述べている。

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