image: Engineered bacteria target tumors and activate the host immune system to eliminate cancer cells. view more
Credit: Carla Schaffer / Zheng <i>et al.</i> / <i>Science Translational Medicine</i>
癌との戦いに役立てるために改変した細菌を採用し、腫瘍に侵入させて免疫系を活性化させ悪性細胞を殺すことに成功したことが、新しい研究で報告された。無害になるようデザインした細菌株を注射したマウス20匹中11匹で、腫瘍の大きさが検出限界未満まで縮小し、癌性腫瘤の増殖も有効に抑制できた。Salmonella株はさまざまなタイプの治療薬の送達に利用されているものの、このような戦略では細菌を複数回注射する必要があることが多く、再発もよく生じている。よりよい方法を探索し、Jin Hai Zhengらは、「トロイの木馬」として弱毒化Salmonella typhimurium 細菌を利用した。この細菌は腫瘍内の低酸素環境に侵入し、海洋微生物Vibrio vulnificus の移動に関与しているFlaBと呼ばれるタンパク質に由来する、防御性マクロファージの癌排除活性を活性化する免疫反応誘発シグナルを分泌した。FlaBを発現している細菌は毒性がないことが証明され、重要なことに、げっ歯類では癌以外の組織には侵入しなかった。投与3日後、腫瘍内の細菌数は重要臓器内に比べて10,000倍多かった。さらに重要なことに、ヒト結腸癌のマウスモデルでは、SalmonellaとFlaBを組み合わせることで相乗的に腫瘍が縮小し、生存期間が延長し、転移が予防された。FlaBを産生しない微生物を投与したマウスでは、癌の量が幾分減少したが、腫瘍が再増殖する傾向がみられた。Jin Hai Zhengらは、この良好な安全性プロファイルによって、改変した微生物が有望な抗癌戦略となると考えている。
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Journal
Science Translational Medicine