News Release

プラズマ乱流が伝播する現象を世界で初めて実証

日米共同研究の成果

Peer-Reviewed Publication

National Institutes of Natural Sciences

Propagation of Heat Pulse and Turbulence

video: Heat pulse is generated approximately at the normalized minor radius x=0.0. Flat blue line means no temperature gradient inside the magnetic island (x=0.6?0.8). Turbulence (in red) propagates faster than the heat pulse. view more 

Credit: Dr. Katsumi Ida

核融合発電の実現を目指して、高温のプラズマを磁場で閉じ込める研究が世界中で行われています。加熱された高温のプラズマは中心で温度が高く、外側で温度が低くなっており温度の差(温度勾配)があります。中心の温度が更に高くなり温度勾配が急峻になると、プラズマ中の温度勾配が大きくなったところで乱流が発生します。乱流によって温度の高いところが低いところとかき混ぜられるため、中心部のプラズマの温度を効率的に上げることができなくなってしまいます。このため、乱流の発生や抑制に関する研究が、世界中の磁場閉じ込めプラズマ実験装置(トカマク及びヘリカル型)で行われています。これまでの研究でプラズマの乱流は数多く観測されていますが、この乱流がその場所で発生したものなのか、それとも別の場所で発生したものが伝播してきたものなのかを区別するのは困難でした。発生した乱流がプラズマの他の領域に広がる「乱流の伝播」という現象は理論的には予測されていましたが、実験で観測されたことはありませんでした。

今回、大型ヘリカル装置(LHD)で考案した、「瞬時加熱伝播法」を米国のジェネラルアトミックス社のトカマク型核融合実験装置ダブレットIII-Dに応用することにより、世界で初めて「乱流の伝播」を実験で観測しました。

今回、「乱流の伝播」を検証するために、プラズマには磁気島という温度勾配がゼロで乱流が発生しない特別な領域での乱流の観測に挑戦しました。その結果、乱流が発生するはずのない「磁気島の領域」で乱流が存在すること、しかもその乱流は温度変化よりも先にOポイントと呼ばれる磁気島の中心に伝わることを発見しました 。

この成果は、乱流の伝播を抑制すれば、乱流を発生した場所に閉じ込めることができるという新しい考え方を実験的に実証したことが評価の対象になっています。また、アメリカの有名企業であるジェネラル・アトミックス社との共同研究をこのように結実させ、著名な科学雑誌である「フィジカル・レビュー・レター」に掲載されたということは、本研究所の研究力が世界的に見ても高い水準にあることの証明でもあります。

今後も本研究成果を発展させ、乱流の抑制やプラズマの高性能化についてさらなる知見を明らかにし、これまで以上に研究所の国際的な存在感を高めていきます。

【用語解説】

乱流:

プラズマを加熱していくと、温度勾配が大きくなるにつれて小さい渦状の流れができる。この小さい渦状の流れは大きさもさまざまで不規則に並んでいるので乱れた流れ、即ち、乱流と呼ばれている。乱流が発生すると、温度勾配の上昇が妨げられる。

磁気島:

プラズマを閉じ込めるためには、磁場でできた入れ子状のかごを形成する必要がある。磁場のかごの断面の形状は、木の年輪のような同心円状である。今回の実験では外部からわずかな磁場(摂動磁場)を意図的に加え、木目のような三日月状の構造を作っている。この構造は、川の中の島のように見えることから磁気島という。磁気島の内部は温度勾配がゼロのプラズマが存在する特殊な領域となっている。 瞬間加熱伝播法:

打音検査で叩いた後の音を聞いて金属の状態を調べるように、瞬間的にプラズマに熱を加えて、その熱が伝わる速さからプラズマの閉じ込め性能を調べる方法で、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置で考案された。

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