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豊橋技術科学大学機械工学系 真下智昭准教授らとケンブリッジ大学工学部 飯田史也准教授らの研究チームは、垂直な壁を登るヒル型ロボット「LEeCH」を開発しました。LEeCH(Longitudinally Extensible Continuum-robot inspired by Hirudinea)は、シャワーのホースを素材とした柔軟な体と2つの吸盤を持っており、本物のヒルのように自在に伸びたり曲がったりすることが可能です。柔らかい構造と吸盤を活かすことで、垂直な壁を登りさらに壁の反対側まで移動することを可能としました。本研究の結果は、3月27日に米国の科学雑誌Soft Roboticsに掲載されました。
壁登りロボットはビルの点検・検査や災害現場での捜索・救助などでの活躍が期待されています。垂直な壁を真っすぐに登るだけならばそれほど難しくはありません。しかし実際には、壁の途中にある段差や障害物を越える、または、方向の異なる壁へ移動しなければならない場合もあります。特に難しい課題は、壁の反対側に移動することです。ロボットが、壁を垂直に登って頂上に辿り着いたのちその壁を乗り越えるのは,ロボットにとっては至難の業でした。
そこで、研究チームは自然界の優れた登山家である山ヒルを模倣したロボットを開発しました。山に生息する山ヒルは、その両端にある2つの吸盤と伸縮自在な体を用いて、複雑な地形や壁面を自在に移動することが出来ます。また、その柔らく軽い体は、万が一高所から落下しても大きなダメージを負いません。
この軽量・柔軟・伸縮自在といったヒルの特長を模倣するために、シャワーのホースの構造を用いた新しい動作機構を考案しました。このホースはS字形状の金属板が螺旋状に巻かれたもので、一般の家庭でも使用されているものです。ホースの螺旋状の溝に歯車の歯をかみ合わせると、歯車の回転に応じてホースは前後に動きます。開発したロボットは3本のホースを束ねた体を持ち、歯車で送り出したそれぞれのホースの長さに応じて、伸縮または曲げ運動を行うことが出来ます。
開発したロボットは垂直な壁において、昇降方向や水平方向の移動に成功しました。この2つの移動方法を組み合わせることで、ロボットは2次元の壁面上であれば自由な位置に移動することが可能です。さらに柔軟かつ大きく変形する体を活かして、垂直な壁から反対側の壁への移動を達成しました。このように自由な壁面移動ができる柔らかいロボットの開発は、世界初の研究成果です。
開発者であり論文の筆頭著者である博士後期課程の金田礼人は「このアイデアは実は、自宅のお風呂場でひらめきました。シャワーの水を間違えて勢いよく出してしまったところ、ホースが生物のように勢いよく暴れだしました。それを見て私は、ホースを自由に動かすことができたら生物のようにダイナミックな動きを行うロボットが実現できるのではないかと考えました。」
研究チームは、シャワーのホースの中空構造を活かし、内部に液体を流してロボットの硬さを変化させるアイデアも検討しています。柔軟な構造をもつロボットは、環境への適応性が高いだけでなく、衝突に対する安全性も高いことから、将来的には人の近くで働くロボットとしても活躍できる可能性もあります。
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Reference:
Ayato Kanada, Fabio Giardina, Toby Howison, Tomoaki Mashimo, Fumiya Iida, “Reachability Improvement of a Climbing Robot based on Large Deformations induced by Tri-Tube Soft Actuators,” Soft Robotics.
This work was supported by the Grant-in-Aid for JSPS Research Fellow (No. 17J04776), the United Kingdom’s Engineering and Physical Science Research Council (EPSRC) DTP under Award 1476475 and RG92738, and Mathworks Ltd RG90950 378. また、筆頭著者の金田礼人は文部科学省・日本学術振興会の実施する博士課程教育リーディングプログラムの支援を受けました。
Journal
Soft Robotics