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父親の食事はその精子のRNAに影響する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

マウスを用いた2つの新たな研究から、父親の食事がその精子の特定の小分子RNAに影響を及ぼし、これによりその子の遺伝子調節が影響を受ける可能性があることが示された。これらの結果は、オスの親の生活習慣がその子孫に、例えば精子のエピゲノム、微生物叢の伝播、精液のシグナル伝達を介して、影響を及ぼし得るという、解明されつつある影響の仕方のリストに新たな因子を加えるものである。第一の研究でQi Chenらは、高脂肪食(HFD)または通常食(ND)で飼育したマウス群の精子を用いて卵子に受精させた。両群の仔には、16週以内の体重に明らかな差はなかったが、7週齢という早い時点で、父親がHFD群の仔には耐糖能異常とインスリン抵抗性が発現し、いずれも15週目にはより重度となった。HFD群とND群の仔にみられたこのような差に、精子のRNAが影響したかどうかを調べるため、研究者らは両群の精子からRNAを精製し、正常な受精卵に注入した。HFD群の仔では血中のグルコースおよびインスリンの濃度が有意に高く、そのインスリン感受性はND群の仔と同等であった。これらの結果からHFD群の精子RNAには耐糖能異常を誘導する情報が含まれているが、インスリン抵抗性を誘導する情報は含まれていないことが示唆される。さらに調べたところ、約30~34個のヌクレオチドを含むtRNA断片が、HFD群の仔で観察された耐糖能異常を引き起こした小分子RNAクラスであると同定された。ND群とHFD群の仔のゲノムワイド比較により、ケトン、炭水化物、単糖の代謝に関わる遺伝子の発現が、HFD群では有意に低いことが分かった。

2件目の研究でUpasna Sharmaらは、低蛋白(LP)食で飼育したマウスの精子がRNAレベルで何らかの変化をきたすかどうかを検討した。研究者らは、精巣内の未成熟精子の小分子RNAには食事と相関する影響はないことを示したが、精巣上体内の成熟精子について小分子RNAのシーケンシングを行ったところ、特定のRNAの発現が亢進していることが明らかになった。LPマウスと対照マウスの精子からRNAを分離してみると、LP群ではtRNA-Gly-GCCというRNAの量が特に多いことが分かった。さらに分析を行った結果、tRNA-Gly-GCCは、レトロエレメントMERVLを含む、一部の遺伝子を抑制することが明らかになった。これらの結果とChenらの結果を合わせると、精子のRNAがいかに食事によって影響を受ける可能性があり、この影響が子孫におおいて遺伝子調節の変化と、関連する代謝障害を引き起こし得ることが示される。

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