News Release

筋と骨の量的な制御と重力との相関を解明

マウスの宇宙実験(きぼう)と地上実験で証明

Peer-Reviewed Publication

Tokyo University of Agriculture and Technology

The Effects of Altered Gravity on the Bone Mass of Humerus in Mice

image: The µCT images of humerus were shown in upper panels, and the parameters of µCT analysis for humerus bone mass were shown in lower panels in space mice (A.) and 2G mice (B.). A significant difference between the two groups was indicated; *P<0.05 and **P<0.01 vs AG, #P<0.001 vs 1G. Scale bar indicated 1 mm. BV/TV: bone volume/tissue volume, BMC/TV: bone mineral content / tissue volume. view more 

Credit: Masaki Inada

適切な重力負荷と運動が宇宙や地上に関わらず筋と骨を維持・増加させる: 国立大学法人東京農工大学大学院工学研究院・生命機能科学部門の稲田全規(いなだまさき)准教授と宮浦千里(みやうらちさと)教授、オックスフォード大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)で構成された国際共同研究チームは、宇宙実験(きぼう)と地上実験の活用により、重力を可変させた環境におけるマウスの飼育実験を行いました。本発見では、宇宙や地上に関わらず、異なる重力下での生活運動が筋と骨の量的制御に関わり、筋・骨量の増加への適切な負荷量の範囲の一端が明らかとなりました。これら発見は、高齢化社会の解決課題であるロコモティブシンドロームの予防法の開発へつながることも期待されます。

###

本研究成果は、英国の科学学術誌Scientific Reports誌(4月29日付)に掲載されました。

URL:https://www.nature.com/articles/s41598-019-42829-z 

研究背景:

宇宙環境や寝たきりなどの不動状態では、使われないことによって筋(筋肉)が萎縮したり、骨が破壊される現象が起こります。これら筋と骨の疾患は高齢者のQOL(生活の質)を左右し、長寿健康社会の達成にとって解決されるべき課題となっています。これまでに、本学工学研究院生命機能科学部門の稲田と宮浦、オックスフォード大学の研究チームは不動状態における筋萎縮と骨破壊のメカニズムを研究してきましたが、今回のJAXAとの共同研究により、宇宙滞在による微小重力および地上実験による遠心飼育装置を用いた加重環境下でのマウス長期飼育解析に成功し、今回の発見につながりました。

研究体制:

本研究は国内外の共同研究者と連携実施したもので、詳細は以下の通りです。

○東京農工大学:稲田全規准教授、宮浦千里教授、富成司特任助教、市丸亮太大学院生

○英国オックスフォード大学・東京農工大学グローバルイノベーション研究院:Yoshifumi Itoh

○宇宙航空研究開発機構(JAXA):芝大、白川正輝、湯本茜

研究成果:

微小重力は宇宙環境においてのみ実現する特殊環境であること、また、地上実験における加重環境下における長期飼育も専用の実験装置が必要なことから、異なる重力環境下における筋骨格系の比較解析は困難でした。本研究では、国際宇宙ステーション(きぼう)において、微小重力(microG)と遠心飼育装置を使って人工的に地球上と同じ重力(1G)を再現した環境下での長期飼育マウスの比較解析を行いました。さらに、地上実験では通常重力(1G)と遠心飼育装置による加重力(2G)による長期飼育マウスの比較解析を行い、筋骨格系組織への影響を解析しました。その結果、微小重力下での運動環境である長期宇宙滞在マウスの骨解析では、上腕骨および脛骨の骨量減少が認められました。これらの骨量減少は遠心負荷による人工重力(1G)下での飼育において認められませんでした。一方、遠心飼育装置による2G負荷マウスにおける筋の解析では、下腿筋(膝から足首にある筋)において筋が肥大しました。遺伝子発現を検討したところ、筋制御遺伝子群の発現亢進ならびに筋分解系遺伝子群の発現抑制が認められ、下腿筋量が有意に増加しました。骨の解析では、頭頂骨および上腕骨、大腿骨、脛骨の骨量が増加し、骨形成系・骨吸収系遺伝子ともに上昇しました。  

これら結果より、重力変化は筋骨格系の量的な維持において正負に相関した量的な変化を示すことが明らかとなりました。さらに、これら運動器への2Gの重力負荷による筋・骨量の増加が認められ、2G負荷は筋骨格系の維持に至適な重力負荷であることを見出しました。 

 これら発見は、運動療法をはじめとするロコモティブシンドロームの新たな予防法の開発へつながることが期待されます。

◆研究に関する問い合わせ◆

東京農工大学大学院工学研究院
生命機能科学部門 准教授
稲田 全規(いなだ まさき)
E-mail:m-inada@cc.tuat.ac.jp


Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.