image: (A) Infection and tissue sampling timeline. (B & C) Heatmaps of all genes expressed in the liver after HBV infection as assessed by a next-generation sequencer. Upregulated genes are shown in C-left, downregulated genes in C-center, and unchanged genes are shown in C-right. Image adapted from Kouwaki et al. (DOI: 10.3389/fimmu.2016.00335). view more
Credit: Professor Hiroyuki Oshiumi
哺乳動物が持つ自然免疫系は、ウイルスや微生物による感染を防御します。ただ、残念なことに、ヒトB型肝炎ウイルス（HBV）の免疫応答はまだよく解明されていません。B型肝炎は、ワクチン接種をしなければ、肝臓の急性および慢性両方の感染を引き起こし、肝硬変や肝臓がんの発症に繋がる恐れがあります。HBVに対してどう免疫応答システムがはたらくかを解明するため、日本およびマレーシアの研究機関との共同研究により、熊本大学の押海裕之教授らが、HBVに感染する小型哺乳動物、ツバイを用いた生体実験を行いました。
ウイルスを注射したツバイの内約半数にあたる55％がHBVに感染し、多数のツバイがHBVに対する自然免疫力を持つことが示唆されました。また、免疫応答系の活性化や調節、ウイルスの複製機能の阻害に重要な役割を果たすサイトカイン、インターフェロンガンマ（IFN-γ）の出現が初期（感染後１日目）の感染個体群に確認されました。これは、HBV感染の免疫応答による肝臓のナチュラルキラー細胞の活性化によって引き起こされたものと考えられます。さらに、IFN-γが肝細胞のDDX60遺伝子の発現を促進していることを突き止め、HBVにおいてIFN-γが抗ウイルス作用として機能していることを裏付けました。DDX60遺伝子の発現は、HBV RNAの変性を引き起こすものです。
細胞外小胞（細胞から放出される小胞）がHBV感染の自然免疫応答に不可欠であることも、今回の重要な発見の一つです。HBVに感染した肝細胞から出た細胞外小胞がウイルス核酸を運び、そのことによってHBVに対する自然免疫応答が刺激されることがわかりました。また、同時に、HBVが細胞外小胞における免疫抑制性のマイクロRNAを増加させることによって免疫応答系から逃れていることも分かりました。免疫抑制性のマイクロRNAが増加すれば、結果としてナチュラルキラー細胞が減少し、HBVが増殖しやすくなります。
本研究成果は、B型肝炎ウイルスに対する自然免疫応答研究の新たな境地を開き、関連する分子機構の解明についてさらなる知見へと繋がるものです。本研究成果に関する論文はオープン・アクセス・ジャーナル『Frontiers in Immunology』に掲載されました。
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[Citation]
T. Kouwaki, Y. Fukushima, T. Daito, T. Sanada, N. Yamamoto, E. J. Mifsud, C. R. Leong, K. Tsukiyama-Kohara, M. Kohara, M. Matsumoto, T. Seya, and H. Oshiumi, “Extracellular vesicles including exosomes regulate innate immune responses to hepatitis B virus infection,” Frontiers in Immunology, vol. 7, p. 335, Aug 2016.
DOI: 10.3389/fimmu.2016.00335
Journal
Frontiers in Immunology