News Release

質量分析計を用いたメタボローム解析による大腸がんの早期スクリーニング法を開発

Peer-Reviewed Publication

Kobe University

株式会社島津製作所、神戸大学大学院医学研究科と国立がん研究センターは共同で、トリプル四重極型ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて血液中の代謝物を網羅的に分析するメタボロミクス解析*1)により、早期の大腸がん*2)であっても非常に高感度で検出できる新たなスクリーニング法を開発しました。

本研究結果は、2月4日付の米国科学誌Oncotarget(オンコターゲット)オンライン版に掲載されました。

研究成果の概要

神戸大吉田准教授らのグループは2012年に大腸がん患者と健常検体の血清をガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)による臨床メタボロミクス解析手法を用いて分析し、大腸がん診断に利用できる4種類の代謝物マーカーとそれを用いた信頼性の高い診断予測式を開発しました。この予測式は、CEAやCA19-9など既存の腫瘍マーカーと比較して有用性が高いと考えられるものの、実際にスクリーニング法として利用するには感度*3)、特異度*4)の面でまだ不十分なものでした。

そこで、島津製作所と神戸大学の共同研究チームは、島津製作所の独自技術である高速スキャン制御技術(ASSP)とSmart MRM技術を組み合わせた高速・高感度GC/MS/MSを利用し、血漿中の代謝物をより高精度に定量できる分析手法を開発しました。この手法を用いて、国立がん研究センターに保管されている臨床情報の明らかな600以上の大量の検体を分析することで非常に高性能なスクリーニング法を開発しました。大腸がん患者と健常者検体の血漿中の代謝物を網羅的に解析した結果、大腸がん診断に利用できる8種類のマルチバイオマーカー (ピルビン酸, グリコール酸, トリプトファン, パルミトレイン酸, フマル酸, オルニチン, リシン, 3-ヒドロキシイソ吉草酸) を発見し、これら8種類の代謝物データに基づいた感度、特異度とも96%を超える大腸がん診断予測式を作成できました。さらに、構築した診断予測式は、ステージ0やステージ1といった早期大腸がん患者においても、高い感度を保つことも確認できました。

研究助成

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の医療分野研究成果展開事業 先端計測分析技術・機器開発プログラム(開発課題名「全自動超早期大腸がんスクリーニング診断システムの実用化」,チームリーダー:株式会社島津製作所分析計測事業部マネージャー 尾島典行 サブリーダー:神戸大学大学院医学研究科准教授 吉田優)の支援によって実施しました。

※独立行政法人科学技術振興機構 研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)に平成25年度採択、平成27年4月にAMED)に移管

用語解説

※1:メタボロミクス解析

生物の中にある分子全体の変動を探索し、生命現象を包括的に調べる解析手法をオミックス解析という。代謝物全体(メタボローム)を対象にしたものをメタボロミクス解析といい、疾患などによりどのような代謝物がどのぐらい変動するかを調べることで新たな診断法の開発につながることが期待されている。

※2:早期大腸がん

がんが大腸壁の比較的表層(粘膜下層まで)に留まっているもの。

※3:感度

「病気に罹っている人」が検査で「異常あり」と判定される割合。

※4:特異度

「病気に罹っていない人」が検査で「異常なし」と判定される割合。

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