News Release

哺乳類レトロウイルス様蛋白を利用してmRNA輸送を拡張する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

古代に獲得されたレトロウイルスの残骸である遺伝子から採用された哺乳類蛋白質ファミリーを用いて、研究者らが細胞間mRNA輸送のためのプログラム化可能な新規システムを開発した。この手法は「免疫原性を最小限にした、反復投与ができる送達プラットフォームへと拡張できる可能性があり、これによって核酸療法への応用が大幅に広がることになる」と、Michael SegelとFeng Zhangらは記している。COVID-19ワクチンにより、多様な臨床応用におけるmRNA使用の力と可能性が実証されているが、核酸療法薬には特定の細胞種を標的とする頑健な送達プラットフォームがないため、依然としてその利用に限界がある。mRNAを用いた既存の薬物送達は、ほとんどが筋肉内mRNAワクチン注射または肝臓を標的とした脂質ナノ粒子に限られている。今回SegelとZhangらは、哺乳類レトロウイルス様蛋白を利用することで、特定の標的細胞集団へのmRNAの細胞内送達が可能になることを示した。進化の過程を通して、レトロウイルスを含むレトロエレメントは、哺乳類のゲノム内に組み込まれてきた。これらのエレメントの多くはその本来の機能を失った一方、一部は新たな機能を得て哺乳類の発達と生理学的機能において重要な役割を果たすようになった。レトロウイルスとレトロエレメントに共通にみられる特徴は、gagとして知られるコア構造遺伝子である。この遺伝子の哺乳類ホモログはウイルス様のカプシドを形成してmRNAを輸送することが知られている。Segelらは、いくつかの哺乳類gagホモログを同定し、そのうちPEG10はウイルス様のカプシドを形成して選択的に細胞と結合し、mRNAカーゴの小胞分泌を促進する。さらにこのmRNAカーゴは、遺伝子Peg10の非翻訳領域内に特定の遺伝子を挿入することでリプログラミングが可能である。著者らはこの方法を用いて、マウスとヒトのPEG10に遺伝子操作を行って、特定のRNAを内包、分泌、そして細胞内に送達するようにして、Selective Endogenous eNcapsidation for cellular Delivery(SEND)という今回の新規システムを開発した。


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