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ハイドロリックジャンプによってスーパーセル型雷雨上空の成層圏に水分が供給される

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

激しい雷雨によって対流圏(地表に最も近い大気層)から成層圏へ水蒸気が流入する仕組みについて、新たな見識が得られた。今回の研究では、プロセスの一部として「ハイドロリックジャンプ(跳ね水現象)」を提案している。激しい雷雨が発達すると、たいていは雷雲が対流圏から上方に向かって急成長し、ついには対流圏界面に達する。すると、雲はそれ以上成長できなくなって、最上部が平らになり、金床(かなとこ)に似た特徴的な形になる。しかし、非常に強いスーパーセルの場合、激しい上昇気流が対流圏界面を突き抜けて成層圏にまで達することがある。こうして突き抜けた雲の最上部には「Above-Anvil Cirrus Plumes(AACP:金床雲上空の巻雲プルーム)」が生じて、それが数キロメートル上空まで成長し、風下に向かって広がる。このような雲の形成は、大型竜巻や雹(ひょう)などの悪天候が地上に発生する前触れとなるだけでなく、水蒸気が下部成層圏に流入する際に重要な役割を果たしている可能性もある。ただし、この件ついては議論が続いている。しかも、AACPの適切な物理的モデル(および、潜在的気候フィードバックなどの多くの特徴や影響)が不足している。AACPの物理学と成層圏への水分供給におけるその潜在的役割とを理解するために、Morgan O’Neillらは大渦シミュレーションとその裏付けとなるレーダー観測を組み合わせた。O’Neillらは、成層圏にまで達した雷雲が地形学的障壁のような機能を果たし、高高度の風の流れを変えることを見出した。その結果、対流圏界面において雷雲の下流でハイドロリックジャンプが発生し、成層圏に水蒸気が激しく流入する。ひとたびジャンプが発生すれば、毎秒7トン超えるペースになることもある。著者らによると、AACPはこのプロセスが目に見える形で現れたものであるという。関連するPerspectiveではJessica Smithが、「NASAのDynamics and Chemistry of the Summer Stratosphere(夏季成層圏の力学と化学)ミッションで得られた観測結果を併用して、スーパーセル型雷雨の物理的性質に対する理解が深まれば、……対流圏から成層圏への対流輸送における残された不確定要素に対処したり、現在の影響を数値化したり、このメカニズムが気候条件の変化にどう反応するかを予想したりするうえで、大きな進歩となる」と述べている。


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