News Release

青波長走査型レーザー広角眼底写真は糖尿病網膜症の網膜虚血を示す

Peer-Reviewed Publication

Tokyo Medical and Dental University

image: A: Multicolor widefield SLO image of the right fundus of a 65-year-old man with PDR showing multiple hemorrhages in a wide area of the fundus. B: Blue SLO image shows a hyporeflective area in the mid-periphery to periphery of the fundus. C: Widefield FA image shows widespread NPAs in the mid-periphery to periphery. Neovascularization is also seen in the superior pole of the eye. D: Magnified image of image B shows hyporeflective areas in the lower temporal quadrant. E: Magnified FA image of image C shows NPAs in the same quadrant of image D. F: The hyporeflective areas in image D are outlined by white dots. G: The NPAs in image E are outlined by blue dots. The outline of white dots in image F is located inside the outline of blue dots image G. (Horie S, Ohno-Matsui K et al. Asia Pac J Ophthalmol (Phila). 2021 Aug 27; 10(5):478-485) view more 

Credit: Department of Ophthalmology and Visual Science, TMDU

 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野の大野京子教授と先端視覚画像医学講座の堀江真太郎ジョイントリサーチ講座講師の研究グループは、青波長の走査型レーザー検眼鏡による広角眼底撮影の単一の眼底写真が造影剤を使用せずに広範囲の眼底の網膜無血管野を高率に検出できることを示しました。この研究は株式会社ニデックとの本学ジョイントリサーチ講座の研究としておこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌Asia Pacific Journal of Ophthalmologyに、2021年8月27日にオンライン版で発表されました。

【研究の背景】
 糖尿病網膜症は糖尿病の三大合併症の一つであり、視覚障害の全国調査でも上位を占める重要な疾患です。糖尿病網膜症の進行は、網膜毛細血管の障害と血管からの血液・血漿成分の漏出を主とする病態から、毛細血管床の閉塞(無血管野の形成)へ進行し、さらに無血管野における網膜虚血によって重篤な合併症である網膜血管新生を生じます。網膜虚血と新生血管を伴う増殖期においては網膜光凝固が必要で、増殖前網膜症の段階で網膜無血管領域を早期に発見し、網膜光凝固することによって増殖網膜症への進行を抑制することが期待できるため、糖尿病網膜症において網膜虚血を発見することは臨床上非常に重要なことであると考えられています。しかしながら、網膜無血管野をみつけるためにはフルオレセイン蛍光眼底造影検査が必要であり、造影剤の使用が難しい患者さんがいることやアナフィラキシーショックなど一定のリスクが伴う問題がありました。また近年、造影剤を使用しないOCTアンギオグラフィーもありますが、眼底の周辺部まできれいな画像を得ることは臨床上困難でした。

【研究成果の概要】
 糖尿病網膜症を対象に、赤緑青の3色を有する走査型レーザー検眼鏡(ニデック社ミランテ)の青波長の広角眼底画像を通常の蛍光眼底造影検査の所見とともに比較検討することを行いました。その結果、蛍光眼底造影検査で検出された網膜無血管野の約8割以上は青波長のレーザー走査型広角眼底画像でも確認できることが示されました。

【研究成果の意義】
 糖尿病網膜症の進行を示す網膜無血管野を調べるためには蛍光眼底造影検査を行う必要がありました。一方で造影剤が使用できない症例や、使用へのリスクなどから、本検査にはハードルがあり、網膜虚血の存在が確認できず治療が遅れてしまう症例なども少なくないと考えられます。今回の我々の研究では、青波長の広角走査型レーザー眼底撮影は造影剤無しで糖尿病網膜症における網膜虚血を高率に検出できることを示しました。また糖尿病網膜症の無血管野の形成は網膜の広範囲に生じるため、広角眼底撮影の単一画像で無血管野を見落とすことなく簡易に検出できる可能性も示唆されました。本方法は非侵襲的かつ簡易であるため、広く糖尿病網膜症患者の診断精度の向上につながり、新生血管のような重篤な合併症を起こす前に無血管野に対する治療を行えることで失明防止に貢献すると考えられます。

【用語解説】
※1糖尿病網膜症・・・・・・・・糖尿病の3大合併症の一つ。日本では緑内障、網膜色素変性症に次いで視覚障害の原因疾患の第3位(2015年度 「厚生労働省 難治性疾患等制作研究事業, 網脈絡膜萎縮・視神経萎縮症に関する調査研究班」による。単純網膜症、増殖前網膜症、増殖網膜症と段階を経て進行し、最も重篤な病態である増殖網膜症への進展は網膜無血管野の形成、虚血の進行が背景にある。
※2走査型レーザー検眼鏡・・・・・・・・単一または複数のレーザー光による眼底撮影方法。近年、小瞳孔や眼底の広範囲を一度に撮影できる広角眼底撮影が可能な様々な機種が開発され、それぞれ臨床現場で活用されている。ニデック社のミランテは網膜赤道部までカバーする163度の広角眼底撮影と赤緑青の3波長による3色合成カラー画像が得られることが特徴である。
 


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