News Release

冬眠しているリスは尿素を供給する腸内細菌のおかげで体力を維持する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

冬眠しているジリスの腸内細菌は尿素を再利用して重要なアミノ酸を補給することで、リスは長期にわたる不活動と飢餓の状態を生き延びられることが、新たな研究により示されている。この結果は、冬眠における細菌の重要な役割を明らかにしており、ヒトを含めた他の種においても、同様のプロセスが蛋白のバランスを維持し、筋の消耗を軽減する助けとなっている可能性が示唆される。哺乳類において冬眠は、冬などの厳しい季節の期間を生き延びることを助けるために発達した。冬眠している動物は休眠状態になり、生理学的活動が低下した状態に入る。多くの哺乳類にとって、長期にわたる不活動と飢餓の状態は、体内で筋蛋白質の分解を引き起こし、その過程で発生するアンモニアはさらに尿素に濃縮される。尿素は高濃度になると毒性を持つが、通常は尿中に排泄され、この過程によって体内から、重要な生物学的機能にとって欠かすことのできない窒素が排泄され続ける。食事性窒素の不足と長期の不活動状態にもかかわらず、冬眠する動物の中には、1年のうち6ヵ月近くも食事を摂らないでいるジュウサンセンジリス(Ictidomys tridecemlineatus)のように、長い冬の間に筋量や機能がほとんど低下しないものがいる。こうした冬眠動物は、尿素窒素サルベージと呼ばれるプロセスにより、尿素窒素を再利用して元の蛋白質プールに戻す腸内細菌の能力を利用している可能性が考えられる。Matthew Reganらは安定同位体標識を用いて、冬眠中のリスの体内における窒素の動態を追跡した。この実験により、尿素は尿中に排泄されるだけでなく、リスの腸管内に輸送されることが明らかになった。Reganらが冬眠しているジリスにおける腸内細菌叢の活動を分析した結果、尿素分解活性を有する腸内細菌が尿素中の窒素を取り込み、変換された代謝物が再び宿主によって吸収され、宿主は機能的な蛋白質バランスを維持できることが分った。こうした一連のプロセスによって窒素不足が代償され、筋量の低下が防がれていた。「筋消耗は、加齢によるサルコペニア、蛋白質栄養不良、あるいは宇宙旅行や、重症疾患による入院で長期の不活動を有する人々にみられる」と、関連するPerspectiveでFelix Sommer Fredrik Bäckhedは記している。「ヒトにおいても尿素からの窒素のサルベージという機能が働いているようであるため、窒素再利用を引き起こすために腸内細菌叢を標的とする介入が、上記のような病態に対する治療法となる可能性がある。」


Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.