News Release

絵画配色の好みに見られる普遍性

画家が美しいと感じる配色は見る人も美しいと感じる

Peer-Reviewed Publication

Toyohashi University of Technology (TUT)

図1:色相回転による絵画配色の操作

image: 絵画の空間構成、明度は変化させず、平均色を中心に色相を反時計回りに回転させる。色の相互関係、鮮やかさ、平均色などは変わらないものの、絵画配色に対する印象が大きく変化する。およそ70%の実験参加者が、それまでに見たことが無い絵画であっても、原画の配色を最も好んだ。 上段:中村正義 「花」(20世紀後期)豊橋市美術博物館所蔵;下段:Amadeo de Souza-Cardoso “Brut (300 TSF) 2 ” (1917) public domain, source: WikiArt (http://wikiart.org) view more 

Credit: COPYRIGHT (C) TOYOHASHI UNIVERSITY OF TECHNOLOGY. ALL RIGHTS RESERVED.

<概要>

豊橋技術科学大学 中内茂樹 教授の研究チームは、ミーニョ大学(ポルトガル・ブラガ)の研究者らと協力して、日本人とポルトガル人を対象に、日本画と西洋画の配色に対する選好を原画および配色を人為的に操作した偽の絵画を使って実験的に調べました。その結果、国籍や日本画と西洋画、具象画と抽象画の違いによらず、見たことが無い絵画に対しても多くの人が原画の配色を好むこと、またこの傾向は複数の異なる絵画をパッチワーク状に寄せ集めて作った画像に対しても見られることを明らかにしました。今回発見した絵画配色に対する選好の普遍性は、私たちが絵画に対して感じる「美しさ」が文化的背景や教育経験だけでなく、これらに依らない生物学的な共通基盤を有していることを示唆しています。

 

<詳細>

色は個人の好みに最も影響を与える視覚的要素の一つです。例えば、洋服を選ぶときや、ロゴマークから企業の性格を想像するときなど、色は人の意思決定に大きな影響を与えます。プロダクトデザイナーは、色が消費者行動に与える影響をよく理解し、その効果を最大化するために活動しており、色のトレンドを予測する専門機関も存在するほどです。

 

色の重要性は絵画においても同様です。商業的な理由がない限り、画家は自分の個人的な美的経験を作品として表現しようとします。したがって、絵画の配色は純粋に画家の感性や色彩の好みが反映されたものと言えます。これまで、色に対する選好(好み)に関して多くの研究がなされてきましたが、好みは個人間の差異が大きく、また単一の色に対する研究がほとんどであったため、絵画などのように、多くの色のバランス(配色)に対する選好の科学的理解は十分には進んでいませんでした。

 

本研究は、絵画配色に対する選好を明らかにするために、絵画の空間構成、明度は変化させず、色だけを変化させるように、平均色を中心に各画素の色相を反時計回りに回転させました(図1)。こうした操作によって絵画に含まれる色の相互関係や、平均的な鮮やかさなどは原画からは変わらないものの、絵画配色に対する印象が大きく変化します。この操作によって、90度、180度、270度色相を回転させた画像を用意し、原画を含めた4種類の画像に対して最も好きな配色を参加者に尋ねる実験を行いました(4肢強制選択法)。実験には、ポルトガルおよび日本(豊橋市美術博物館)において撮影した西洋画および日本画合計20作品、およびインターネット絵画ギャラリーから入手した20作品、合計40作品の絵画を用い、それぞれ日本から90名、ポルトガルから45名が実験に参加しました。なお、実験参加者は芸術や美術について、特別な教育は受けていませんでした。

 

実験の結果、日本人もポルトガル人も、それまで一度も目にしたことがない絵画に対しても、およそ70%の参加者が原画の配色を最も好むことがわかりました(もし、ランダムに選んでいたならば、25%となります)。この傾向は、空や人の顔など、特定の色と結びつくような物体が絵画に描かれていないような、抽象画の場合でも同様でした。

 

また、図2に示すように、絵画に描かれている内容が分かりにくくなるよう1枚の絵画を小片に分割し、その位置をシャッフルした条件や、20枚の絵画の一部をパッチワークのように寄せ集めて作った画像に対しても同様の実験を行ったところ、約60%の参加者が原画をシャッフルしたもの、あるいは原画を継ぎはぎしたパッチワークの配色を最も好むことがわかりました。

 

これらの結果から、次のようなことが示唆されました。

  1. 実験参加者が自分の好みにしたがって選んだ配色が、結果として画家の描いたものと一致したということは、美術教育の有無や文化的背景の違いにも関わらず、配色の魅力あるいは美しさに対する基準が画家と一般人の間で一定程度、共通している。
  2. シャッフルしても原画が好まれることから、特定の色を連想させる物体が描かれているなど、記憶色が手がかりとなったのではなく、配色そのものに原画らしさを示す何らかの情報が存在する。
  3. 原画をパッチワーク状に継ぎはぎした画像に対しても原画配色が好まれたことから、全く別の画家が描いた絵画にも何らかの共通した特徴が存在しており、それらを画家も観察者も、意識する・しないに関わらず、美しさ(魅力)として感じる生物学的な仕組みが存在する。

 

<今後の展望>

 研究チームは、配色の魅力や美しさを感じるメカニズムは誰にでも備わっていて、その特性は意外と人に共通であろうと考えています。SNS等の写真に「良いね」と反応したり、衣服を選んだり、部屋の内装を決めたり、そうした意思決定の背後にあるメカニズムを明らかにすることで、極めて個人的で主観的な存在と考えられている「美しさ」について、どのような要因が美しさに影響を与えているのか、そもそもなぜ美しさを感じる仕組みが人間に備わっているのか、そうした問いに答えていきたいと考えています。

<謝辞>

日本画の計測は豊橋市美術博物館のご協力により実施されました。また、本研究は次の助成を受けて行われました。科学研究費補助金(基盤研究(A) JP19H01119; 学術変革領域研究(A) 20H05956)、ポルトガル政府 科学研究費助成金(UIDB/04650/2020)。

 

<論文情報>

Shigeki Nakauchi, Taisei Kondo, Yuya Kinzuka, Yuma Taniyama, Hideki Tamura, Hiroshi Higashi, Kyoko Hine, Tetsuto Minami, João M. M. Linhares & Sérgio M. C. Nascimento, Universality and superiority in preference for chromatic composition of art paintings. Scientific Reports 12, 4294 (2022).
https://doi.org/10.1038/s41598-022-08365-z


Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.