News Release

植物細胞の膨圧からヒントを得たレンガをも割るソフトハイドロゲル製アクチュエータ

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

植物は細胞の膨圧によりその形態を保つことができるが、この植物細胞にみられる膨圧にヒントを得て、研究者らはハイドロゲルに手を加えて、硬いレンガを二つに割るほど速やかに膨張し、複雑な水中構造物を数分間で形成できるようにした。この研究の著者らによるハイドロゲルのデザインは、は独自の強度と速度を持つハイドロゲルベースの作動装置(アクチュエータ)を作成でき、ソフトロボット工学、チューナブル光学、および生物医学などの分野で応用できる可能性がある。このハイドロゲルは、独自の物質特性を数多く有しているため、ソフトアクチュエータの材質として有望である。アクチュエータとは、様々な形態のエネルギーを物理的運動に変換するものであり、この新たなアクチュエータは特にソフトロボット工学のデザインへの応用が期待される。これにはまた、合成アクチュエータと生態系との間に生じるギャップを埋めて生物医学に応用することも十分に期待できる。しかし、従来のソフトハイドロゲル製アクチュエータは一般的に、浸透圧駆動性の機序によるため、作動力が弱く、反応が遅いという欠点を持っていた。さらに、材質自体が高い応力と圧力により破損しやすい。こうした決定的な限界に取り組むため、Hyeonuk Naらは植物細胞に見られる強い膨圧に基づいて、強く迅速に反応するハイドロゲル製アクチュエータを作製する方法を提示している。膨圧は、植物の細胞壁内に閉じ込められることで生じる浸透圧性の静水圧である。この膨圧により、柔らかい植物細胞は高い背丈の形態を支えることができ、生長する根は岩を割るほどになる。Naらは硬いが柔軟性のある半透膜で包んだハイドロゲルを作製し、この半透膜がハイドロゲルの浸透圧性の膨張を調節し膜内に留めることで、730ニュートン(N)という作動力が可能になり、これは従来のハイドロゲル製アクチュエータよりも3ケタ大きなものである。この力はレンガを割るのに十分なものであることを、著者らは示している(関連動画を参照)。このアクチュエータを水中で使用することで著者らは、ギリシャ寺院の建築物や、イグルーのようなドーム状の構造物を迅速に構築できることも示した(関連動画を参照)。Naらはまた、電気浸透を用いて作動速度を大幅に高め、これにより作動時間を従来の1時間以上から数分間に短縮できることを示している。「Naらは、ハイドロゲルにより作動力を最大化するという刺激的な道を開いている」と、関連するPerspectiveでZhen JiangとPingan Songは記している。「この膨圧ハイドロゲルは、極めて大きな作動力、高い圧縮性能、そして迅速な反応性を兼ね備えており、水面下の高圧に耐え得る次世代の水中ソフトロボットの開発に役立つことだろう。」


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