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溶液の酸性度で、ナノ粒子の凝集構造が変化~複雑な「電荷調整」の影響をシミュレーションで解明~

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Institute of Industrial Science, The University of Tokyo

image: Researchers at The University of Tokyo used a hybrid of Monte Carlo and molecular dynamics simulations to predict the self-assembly of charged Janus particles, which may lead to biomimetic nanostructures that can assemble like proteins view more 

Credit: Institute of Industrial Science, The University of Tokyo

正負の電荷を同時に持つナノ粒子は、双対イオン性ナノ粒子と呼ばれ、その電気的な応答性を制御することで、スマート材料開発やドラッグ・デリバリーシステムへの応用など、多くの場面で活用されることが期待されています。多くの場合、ナノ粒子は、その表面の解離基が水中で解離または結合することで、電荷分布を周囲環境に応じて動的に変化させます。この機構は「電荷調整」と呼ばれ、コロイドや生体高分子の電気的性質を理解し、制御する上で欠かせない概念となっています。しかし、コンピューター・シミュレーションに電荷調整の効果を取り入れることは、粒子個々の位置の変化とそれに応じた表面の電荷の変化が整合する様にシミュレーションを行う必要があり、その複雑さのためこれまでほとんどの場合考慮されてきませんでした。

東京大学 先端科学技術研究センターのユアン ジャーシン 特任研究員、生産技術研究所の高江 恭平 特任講師、田中 肇 東京大学名誉教授(現在:先端科学技術研究センター シニアプログラムアドバイザー)の研究グループは、荷電粒子の運動に応じて時々刻々変化する電荷調整の効果を正しく取り入れたシミュレーション技法を新たに確立しました。また、シミュレーションにより、双対イオン性ナノ粒子の作る構造が、電荷調整の有無で劇的に変化することを新たに発見しました。具体的には、電荷調整を考慮しない従来のシミュレーションでは、常にひも状の構造ができるのに対し、電荷調整を考慮した本研究では、丸まったコンパクトな構造と、ひも状の構造とが酸性度(pH)により転移することを発見しました。さらに、電荷調整の効果により電荷分布が粒子の赤道付近に局在し、粒子表面の電荷分布が不均一になることが、このような構造選択性を生み出していることを明らかにしました。

この結果は、ナノ粒子が作る構造や機能発現における電荷調整の重要性を如実に表しています。そのため、pH応答性のスマートナノ材料設計や、タンパク質など正負の電荷を同時に持つ生体分子がどのような構造をつくり、機能を発揮するのかを理解することに役立つと期待されます。

本研究成果は2022年4月12日にPhysical Review Lettersに掲載されました。


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