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バイオインフォマティクスで、耐性を回避する新たな二機能性抗菌薬が明らかに

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

バイオインフォマティクスを用いた予測により、耐性の可能性が低い、天然由来の新規二機能性リポペプチド抗菌薬が探索され、合成された。この抗菌薬はcilagicinと名付けられ、研究室での検討で、Clostridioides difficileなどの治療困難な耐性株やバンコマイシン耐性腸球菌を含む複数のグラム陽性菌に対して強力かつ広範な抗菌力を示し、抗菌薬耐性病原体と戦うための魅力的な候補となっている。広く使用されている抗菌薬に対する耐性の出現は、ヒトの健康に対する世界的な脅威である。そのため、既存の臨床耐性機構を回避する作用機序を持つ新しい抗菌薬の発見が、依然として緊急に必要とされている。細菌のゲノム配列決定の取り組みにより、生合成遺伝子クラスター(BGC)が同定された。BGCには、抗菌薬の探索促進に役立ちそうな、多様な作用機序を持つ抗菌薬の生合成に関する遺伝的指示が含まれている可能性が高い。しかし、これらのBGCの多くはまだ検討されていない。Zongqiang Wangらは、約10,000の細菌ゲノムを解析し、土壌細菌Paenibacillus mucilaginosusのゲノムに存在する独特なリポペプチドBCGを同定した。次にWangらは、バイオインフォマティクスのアルゴリズムを用いて、BCGによってコードされうる化合物を予測し、これらの予測を用いて化合物を化学的に合成した。このようなリポペプチド化合物の一つであるcilagicinは、いくつかの病原性細菌の細胞壁の生合成を阻害し、最終的には細菌細胞を死に至らしめることが明らかになった。さらに、実験の過程では、cilagicin耐性に至る進化が認められなかった。「cilagicinの臨床展開には時間がかかるかもしれないが、Wangらは、将来の抗菌薬発見に向けたインスピレーションに富んだ学際的ロードマップを確立しており、これは抗菌薬耐性との戦いの形勢を一変させる可能性がある」とRyan Seipkeは関連するPerspectiveで述べている。Seipkeは、 cilagicinの開発の次の大きなステップは吸収、分布、代謝、排泄及び毒性試験であると指摘しており、これらの試験で臨床試験に進む前にさらなる構造最適化の必要性が明らかになる可能性がある。


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