News Release

米国中西部に8000年かけて蓄積した森林バイオマス

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

モデル分析によって、米国北中西部における産業革命前の森林成長を再現したところ、数千年にわたり森林バイオマスが増え続けていたことが示された。これは、この地域で退氷後に気候が変化した結果、森林が拡大したことと種組成が変化したことが原因とみられる。これまでの推論では、この地域の森林バイオマス、ひいては蓄積炭素は、産業革命前の数千年にわたり比較的変化しなかったとされてきたが、今回の研究結果はこれを覆すものである。特筆すべきことに、今回のモデル結果は、8000年近くかけて蓄積したものが、産業革命後の伐採や農業によって、わずか150年で失われたことも示している。森林は陸上最大の炭素プールのひとつである。しかし、数百から数千年規模における森林バイオマス・炭素の蓄積の程度やペースについては、解明が進んでいない。そのため、産業革命前の陸上炭素フラックスの推定値は不正確で、将来の炭素‐気候システムを長期予測するうえでの役割もはっきりしていない。産業革命前の森林調査と化石花粉記録から得られた過去のデータを組み合わせて、Ann Raihoらはベイズ統計モデルであるReFAB(Reconstructing Forest Aboveground Biomass:森林の地上部バイオマスの再現)を開発し、米国中西部における過去1万年のバイオマス変化を再現した。Raihoらは、この地域における産業革命前の森林バイオマスが、通説に反して変動していたことを見出した。森林バイオマスは後氷期の気候変化によって最初は減少したものの、徐々にではあるが増え続け、その後8000年間で約2倍になり、1800テラグラムもの炭素が貯蔵された。著者らによると、こうした着実なバイオマスの蓄積は、退氷後に森林領域が空間的に拡大したことと、バイオマスの多い樹種へ生態遷移したことによって可能になったという。今回の研究結果は、産業革命前の完新世を通じて炭素隔離を促進した自然プロセスを模倣することによって、人新世の気候変動を緩和しようとする森林管理戦略に役立つ可能性があると、Raihoらは述べている。


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