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Y染色体のモザイク喪失は高齢者の心不全と関連する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

高齢者で高頻度に発生する、多数の造血幹細胞数がY染色体の喪失を呈する状態が、死亡および加齢関連疾患のリスク上昇と関連する理由が、マウスを用いた研究によって少し明らかになった。Y染色体のモザイク喪失(mLOY)と呼ばれるこの状態は、高齢者における心不全および心筋線維化の重要な危険因子であることが、UK Biobankの前向きデータを用いたこの研究により示されている。この研究では、ある中和抗体がmLOYによる心筋への影響の一部を改善し得ることも明らかにした。「mLOYを有する男性は、このクラスの治療薬に対して優れた反応を示す患者サブ集団を成していると思われる」と、この研究の著者らは述べている。Y染色体は長いこと「遺伝的不毛地帯」であり、生物学的性の決定に関わらないと見なされており、その機能的役割はほとんど理解されていない。しかし血液細胞におけるmLOYは、これまで死亡や心血管疾患、および他の加齢関連疾患のリスク上昇と関連付けられている。ヒト体細胞において、mLOYは男性のゲノムにおいて最も多く獲得のみられる変異である。しかし、mLOYと病理発生との関係は確立されていない。佐野 宗一氏らはCRISPR-Cas9を用いて、Y染色体を欠失する細胞でマウスの骨髄を再構成して、造血幹細胞mLOYのマウスモデルを作製した。その結果、このモデルマウスでは死亡率が高くなり、加齢関連の心筋線維化や心機能低下をきたしやすいことが分かった。この結果によれば、心筋に浸潤する骨髄由来mLOYマクロファージが、トランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)活性亢進の引き金となり、これが線維芽細胞の増殖と心筋組織線維化の加速化につながる。TGF-β1中和抗体を投与したところ、こうした有害な影響が改善することが示された。さらに、ヒト患者の前向き研究から、血中細胞にmLOYを有する患者では、心血管機能不全とその関連死のリスクが高まることも示され、マウスで得られた佐野氏らの所見が臨床的意義を有することが示唆された。「実際、Y染色体、免疫系、および複雑なポリジーン形質の間に、予期しないいくつかの関係が発見され、男性ではY染色体が免疫反応および炎症反応に影響を及ぼすことが示唆される」と、Andreas ZeiherとThomas Braunは関連するPerspectiveで記している。「佐野氏らの研究は、こうした見解を裏付けており、また健康な自然免疫系の維持においてY染色体が重要な機能を有することが明らかにされた。しかし、その機序を明らかにするにはさらなる研究が必要である。」


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