News Release

医薬品が環境に及ぼす影響を抑制する

Reports and Proceedings

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

現在、人間はかつてないほど多くの医薬品を使用しており、それによって地球生態系の医薬品汚染が進んでいる。こうした化学物質が生態系へ及ぼす影響はほぼ未調査であるため、影響を抑制するには新たな対策と研究が必要であると、Gorka OriveらがPerspectiveで述べている。多くの合成化学物質と同様に、人間やペット、家畜が使用するさまざまな薬剤は、排泄物や廃水を通して最終的には環境に入り込む。生物学的変化の誘発を目的とする医薬化合物は、ごく低濃度であっても、生態系に大規模な影響を及ぼす可能性が高い。医薬化合物は、野生生物の体内で生物濃縮されて推奨用量を超える濃度になり、一部の生物の行動や生存に影響を与えていることが既に観察されている。例えば、アジアに生息する数種のハゲワシは、非ステロイド系抗炎症薬であるジクロフェナクに暴露したことにより、絶滅の危機に瀕している。しかし、影響の広がりを示唆する証拠が増えているにもかかわらず、医薬品汚染が生態系に及ぼす影響はほとんどわかっておらず、複合的影響や、複雑な自然システムにおける連鎖的影響については、特に不明な点が多い。Oriveらによると、こうした影響を適切に評価するには、さらなる環境毒性学的な研究が必要だという。また著者らは、製薬施設から出る廃水の汚染除去と、「より環境に優しい」薬剤の開発を進めるよう呼び掛けている。こうした対策は、環境中から薬剤を除去するよりもずっと容易である。著者らは、薬剤が環境に及ぼす影響に関心が高まったことで、意図せぬ結果を招いていることにも言及し、例えば「薬を飲むのを渋るなどがその例である。しかし、利害の対立は避けられないものの、社会が恩恵を受けながら医薬品の悪影響を抑制することはできる」と述べている。

この論文にご興味のある記者の方へ:2022年2月のScienceのReportでは、内分泌攪乱化学物質への複合的暴露と健康への影響とをさらに厳密に関連付けるための、構想が提案されています。この研究論文の著者らが、人間の母子ペアからなる大規模集団を研究した結果、妊婦が複数の内分泌攪乱化学物質に暴露すると、子どもに言語発達遅滞が生じる可能性が見出されました。www.science.org/doi/10.1126/science.abe8244


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