News Release

DAST 技術の独自展開によりバイオケミカル分野への幅広い応用を期待

微量液滴間の接触によりヒスタミン供給量を調整し、液滴内の細胞カルシウム振動の変化を初実証

Peer-Reviewed Publication

Ritsumeikan University

image: In a new study, scientists from Japan demonstrate how the concentration of chemicals in droplets can be accurately controlled by conducting experiments in the tiniest of cell cultures view more 

Credit: Ritsumeikan University

本件のポイント

■ 本研究は、droplet-array sandwiching technology(以降 DAST※)を基本技術としています。DAST では、基板やチップ上に多数の微量液滴をアレイ状に整列させ、上下に対向配置した対向基板上の同様の微量液滴アレイとの距離を制御して接触/分離を操作します。基本は基板上の液滴アレイの一括操作です。

■ 我々の研究チームは、独自にDASTの微量液滴の形状を電気的に個別に制御する技術を開発し、液滴アレイの一括操作だけでなく、独立操作を可能としました。この個別液滴操作技術を用いれば、液滴の接触時間を個別に制御することができるため、上側液滴から下側液滴に供給する物質の量を個別に調整することができます。

■ 本研究では、液滴間接触時間により調整した下側液滴のヒスタミン量(濃度)に依存して、下側液滴の底面に接着した Hela細胞のカルシウム振動の強度が変化する現象を顕微鏡で検知することに成功しました。今回の成果は、独自に発展させたDAST技術のバイオケミカル分野への幅広い応用可能性を具体的に示したものとなります。

※参考:小西聡ほか, Selective control of the contact and transport between droplet pairs by electrowetting-on-dielectric for droplet-array sandwiching technology, Scientific Reports 11,12355(2021)

https://www.nature.com/articles/s41598-021-91219-x

 

<研究成果の概要>

本研究は、DAST を基本技術とし、上下液滴間の接触による試薬供給制御を用いて、異なる量の試薬刺激に対する下側液滴内の細胞振動挙動の制御の可能性について実証することに成功しました。微量液滴アレイ技術として、多数の液滴間の操作に展開することが可能となり、DAST を用いた高スループットバイオケミカルアッセイ系への応用可能性を提示しました。

 

<研究の背景>

従来のDASTにおいては、液滴アレイを一括して操作することに限られており、個別に液滴間の接触融合時間を制御する機能や、液滴内の物質量を調整する機能はありませんでした。我々の研究チームは以前に、微量液滴の形状を電気的に制御する技術によって、液滴間接触/分離の個別制御に成功しました。アレイ上の多数の液滴に対して、上側液滴から下側液滴に供給する物質量を個別に制御できるため、さまざまな物質濃度の液滴を調整することが可能になりました。

 

<研究の内容>

上下液滴間接触/分離の個別制御機能を新たに備えたDAST技術の応用可能性を示すために、本研究では試薬の濃度によって挙動が影響を受ける細胞活動に着目しました。今回、培地中のヒスタミン濃度によるHela細胞のカルシウム振動の強度変化を実証することに成功しました。上下の液滴の接触時間を長くして下側液滴のヒスタミン濃度を高くした液滴では、より蛍光強度の高い振動を確認することができました。

 

<社会的な意義>

DAST は、従来の生化学アッセイ工程を液滴操作によって置き換えていく可能性を有しています。今回、典型的な生化学反応の一つである細胞のカルシウム振動をDAST技術の液滴内で実現し、上下液滴の接触時間制御による液滴内刺激試薬濃度の違いによる細胞カルシウム振動挙動への影響を確認するこ とができました。このことにより、DAST 技術の液滴がディッシュのような生化学反応容器として機能し、ピペットの代わりに液滴間接触/分離を用いた試薬濃度調整が可能になり、典型的な生化学反応を実証できたことから、今後さらなるバイオケミカル分野への幅広い応用へと波及していくことが期待されます。


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