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コロナウイルスの形状がその伝播性に影響を与えることが判明

コロナウイルス粒子が楕円形であることに基づき、その回転をより正確に表す改良版モデルを開発しました。

Peer-Reviewed Publication

Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University

新型コロナウイルス感染症が拡大して以来、コロナウイルス SARS-CoV-2の姿は、私たちの脳裏に焼き付いています。私たちが通常思い浮かべるコロナウイルスは、球体にスパイクがある形をしていますが、厳密に言うと、これは正確な形状ではありません。実際には、コロナウイルスの粒子は、つぶれていたり細長かったりと、さまざまな形の楕円体であることが感染組織の顕微鏡写真から明らかになっています。

このほど、カナダのクイーンズ大学と沖縄科学技術大学院大学(OIST)の国際研究チームは、楕円体の形状の違いによって、流体内でのウイルス粒子の回転と伝播性にどのような影響がもたらされるかをモデル化することに成功しました。本研究は、科学誌Physics of Fluidsに発表されました。

OISTの力学と材料科学ユニットを率いるエリオット・フリード教授は、次のように述べています。「コロナウイルス粒子は、体内に吸い込まれると鼻や肺の中の通路を動き回ります。私たちは、粒子がこのような環境でどの程度まで移動可能かを知ることに関心を持っています。」

具体的には、液体(コロナウイルスの場合は唾液)中を浮遊する粒子の回転速度を表す回転拡散係数をモデル化しました。流体から受ける抵抗が小さく滑らかな粒子ほど、回転速度が速くなります。そして、コロナウイルス粒子の場合、この回転速度がウイルスが細胞に付着して感染する能力に影響を与えます。

「粒子が回転し過ぎると、細胞と接触する時間が短すぎて感染できないかもしれませんし、逆に回転が少な過ぎると、細胞とうまく接触できないかもしれません」と、フリード教授は説明します。

本研究では、長楕円体と扁平楕円体の回転楕円体モデルを作成しました。3つの軸の長さが同じである球体とは異なり、1つの軸の長さが他の2つと異なっています。長楕円体では軸の1つが長く、扁平楕円体では短くなっています。極端なケースでは、長楕円体は棒状に長く、扁平楕円体は硬貨のようにつぶれた形状になりますが、コロナウイルス粒子の場合は、そこまで極端な違いはありません。

研究チームはさらに、楕円体の表面にスパイクタンパク質を加えて、これまでで最も実物に近いモデルを作成しました。クイーンズ大学とOISTの研究チームの先行研究では、三角形状のスパイクタンパク質の存在によりコロナウイルス粒子の回転速度が低下し、細胞への感染能力が高まる可能性があることが示されています。

その研究では、スパイクタンパク質のモデルはより単純なもので、楕円体の表面に単一球体として表していました。

OISTの力学と材料科学ユニットのポストドクトラルスカラーであるビカッシ・チャウラシア博士は、次のように説明しています。「その後、全スパイクが同じ電荷を帯びていると仮定して、各楕円体の表面にあるスパイクの分布を考えました。同じ電荷を帯びたスパイクは、互いに反発し合って、できるだけ離れようとします。そのため、この反発が最も少なくなるように粒子全体に均等に分布するようになります。」

研究チームは、このモデルにおいて粒子の形状が球形から外れるほど回転が遅くなることを発見しました。このことは、ウイルス粒子が細胞にうまく位置を合わせて付着しやすくなることを意味する可能性があります。

研究チームは、このモデルがまだ単純なものであることを認めていますが、コロナウイルスの伝播特性の解明に向けて一歩前進し、感染力の強さの鍵を握る要因の1つを突き止めるのに役立つ可能性があります。


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