News Release

最新AIによる自動運転

道路シーン解析と運転制御を同時に行う新たなAIが 多様な環境での安全な自動運転を実現

Peer-Reviewed Publication

Toyohashi University of Technology (TUT)

End-to-end方式とマルチタスク学習手法を用いたモデル

image: 開発したAIはシーン認識部(青色)と運転制御部(緑色)から成る。シーン認識部は、カラー画像と距離画像を受け取り、周囲環境を認識する。運転制御部は、認識結果を受け取り、ハンドル、アクセル、ブレーキの制御量を計算する。 view more 

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<概要>

 豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 行動知能システム学研究室の三浦純教授と大学院博士後期課程2年のOskar Natanは、道路シーン解析と運転制御を同時に行う新たなAIモデルを開発しました。このAIモデルは、カメラからの入力情報を解析して周囲の状況を認識すると同時に、進むべき経路を計算し、車を誘導します。本モデルは、標準的な自動運転シミュレーション環境での実験を行い、さまざまな状況下で安全な自動運転を行うことができ、他の最新の手法より優れた運転性能を示すことができました。

 

<詳細>

 自動運転システムは、複数のシーン認識や運転制御処理を行う必要があり、一般に複雑なシステムとなります。まず個々の処理を実現し、それらを組み合わせるアプローチでは、個々の処理の調整や最適な組み合わせの探索が必要となり、システム開発に時間がかかります。そこで、最新の深層学習技術を利用し、複数の処理を同時に学習するマルチタスク学習手法と、入力の画像データから出力の運転制御量を直接計算するEnd-to-end方式を用いた単一のAIモデルで自動運転を行う手法を開発しました。提案手法では、複数処理の設計や組み合わせを考慮する必要はなく、また、学習は1つのモデルに対してのみ行うだけで済みます。

 そのようなAIモデルの設計において課題となるのは、最終的に必要となる運転制御量の計算に役立つ情報をどのようにして得るかです。そのためには、複数センサ情報を組み合わせて多様な情報を得るためのセンサフュージョン技術を利用するとともに、モデル中の周囲環境認識部が十分学習できるように多くのデータを与えることが基本的なアプローチになります。しかしながら、大量のデータを扱うための計算量が増大すること、異なる形の情報を組み合わせるためのデータ前処理の設計が必要になること、そして、複数種類の処理の学習をバランスよく進めることなど、モデルの設計と学習における多くの問題を解決する必要があります。

 そこで、研究チームは、次のようなシーン認識部と運転制御部からなるAIモデルを提案しました。シーン認識部は、1つのRGB-Dカメラから得られるカラー画像と距離画像を処理します。運転制御部は、シーン認識部の結果、及び車の速度と目標とする移動経路の情報を得て、運転制御量を計算します。各部のバランスの取れた学習を行うために、修正勾配正規化法(MGN)というパラメータ修正手法を用い、シミュレーション環境上で収集された多数のデータを用いて模倣学習を行います。作成したモデルのパラメータ数は他のモデルよりかなり少なく、性能の限られた計算機でも十分に機能します。

 自動運転に関する標準的なシミュレーション環境であるCARLA環境で実験を行い、他の最新の手法に比べ、小規模のモデルであるにもかかわらず、高い運転性能が得られることを示しました。また、カラー画像と距離画像を組み合わせて作成した鳥瞰地図を利用することで、運転に必要な情報をうまく取り出すことができ、運転性能に極めて有効であることも示しました。

 

<今後の展望>

 研究チームは現在、夜間や強い雨など照明条件が悪い環境下での運転性能向上に取り組んでいます。そのために、照明条件に左右されないレーザ距離センサなどの新たなセンサ情報を追加することにより、シーン認識と運転制御の性能を向上させることを考えています。また、実環境での自動運転への適用も今後の課題です。

 

<論文情報>

O. Natan and J. Miura, “End-to-end Autonomous Driving with Semantic Depth Cloud Mapping and Multi-agent,” IEEE Trans. Intelligent Vehicles, 2022.

DOI: 10.1109/TIV.2022.3185303

 


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