News Release

乾燥地への植林が気候変動を緩和する効果は限定的

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

新しい研究によると、広く認められた有望な手法であるにもかかわらず、地球の広大な乾燥地に植林を行っても気候変動を減速させる効果はほとんどないことがわかったという。この研究結果は、スマート林業による乾燥地への植林はある意味では重要な手段だが、気候への短期的な効果は限定的であるため、排出量を急激に削減することの代替にはなり得ないことを示している。森林は成長するときに炭素を隔離する。植林(樹木の生えていない場所に新たに森林をつくる造林と、劣化した森林を回復させる森林再生)を通じて、樹木がもつこの能力を利用することは、増加する炭素排出を相殺して地球規模で進行中の気候変動を緩和するための、有望な手法として広く提案されている。しかし、植林が気候に及ぼす実際の効果ははっきりわかっていない。なぜなら、樹木被覆率が増えるとその土地のアルベド(太陽エネルギーを反射する能力)が減り、規模にもよるが、局地的あるいは地球規模で温暖化が進むからである。これが特に当てはまるのが、地球の陸地の40%近くを占める乾燥地域であり、反射率の高い砂漠からエネルギーを吸収する暗い森林へ変わるため、造林がもたらすアルベド減少による温暖化効果が、炭素隔離による冷却効果を大きく上回る。乾燥地への植林が気候に及ぼしうる効果について理解を深めるため、Shani Rohatynらは世界中の乾燥地を高精度で空間分析し、そうした地域への造林が気候に及ぼす影響についてシミュレーションを行った。Rohatynらの研究によって、植林に適した地域が4億4800万ヘクタールあることと、その地域に植林すれば今後80年間で320億トン以上の炭素が隔離されうることが明らかになった。しかし、著者らによると、これでも地球温暖化を減速させる効果はほとんどないという。植林した地域ではアルベドが大幅に減少するため、これだけ広大な面積に植林を行っても、中程度排出シナリオや従来通りシナリオの場合は、排出される温室効果ガスの約1%しか相殺しないことが明らかになった。こうした結果にもかかわらずRohatynらは、乾燥地への造林を慎重に計画・実施することで、今回評価した80年間より長い期間では、より局地的な利益や長期的な気候緩和をもたらす可能性があると述べている。


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