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細菌の休眠芽胞は環境信号をいかに処理しているか

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

細菌の長期休眠細胞は、生化学的には不活状態にあるにもかかわらず、蓄積した電気化学ポテンシャルを長期的に少しずつ放出しながら、環境信号を処理することで、適切な時点で生物学的活動および成長を開始できると、研究者らが報告している。この所見は、生理学的に不活状態にある細胞において、細胞の意思決定メカニズムが働いていることを示すものである。厳しい環境条件が始まったことを感知すると、細胞および真菌を含め、芽胞を形成する微生物は数年間、時には数十年間にわたって休眠状態に入り、出芽にとってより好ましい条件になるのを待つことができる。細菌芽胞の休眠状態は通常、生物学的活動が行われないと考えられているが、休眠芽胞は休眠状態を解除することを知らせる環境信号を処理する能力を保持している。しかし、生理学的に不活状態にある芽胞が、環境に対応していかにしてこのようなレベルの意思決定を行っているかは、依然として不明である。Kaito Kikuchiらは、数学モデルと、枯草菌(Bacillus subtilis)の数千個の芽胞を用いた実験によって、休眠の解除は、ニューロンで用いられているのと同様の、電気化学的状態のスイッチ切り替えによって説明される可能性があることを示した。神経生物学において「積分発火」として知られる意思決定メカニズムと同様に、細菌の芽胞は、休眠芽胞の膜の内外におけるカリウムイオン(K+)濃度の勾配によって生じる電気化学的電位を利用して、発芽の引き金とする。芽胞が環境信号に一過性かつ反復的に曝露されると、芽胞の核からその内膜へと流出するカリウムイオンの量が増大し、決定的な閾値に達すると芽胞は休眠状態から活動状態に切り替わる。このメカニズムにより、休眠芽胞内でエネルギーを産生する必要なく、長期にわたり環境信号をモニタリングすることができる。「今後の研究により、多様な分類群の細胞について芽胞の発芽挙動を調べることで、どのような環境条件が発芽の閾値となるかについて、有用な洞察が得られる可能性がある」と、関連するPerspectiveでJonathan LombardinoとBriana Burtonは記している。


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