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逆回転する円盤の混合系が乱流を引き起こし相分離するしくみを解明

Peer-Reviewed Publication

Institute of Industrial Science, The University of Tokyo

image: Researchers at The University of Tokyo simulate the phase separation of self-spinning particles, and show that the process differs from other unmixing processes, which may shed light on the organization of bacteria and other organisms view more 

Credit: Institute of Industrial Science, The University of Tokyo

「自己組織化」とは複雑な構造やシステムが自発的に組み上がる現象を指します。この現象の一種に、例えば、水流の中を泳ぐ魚の群れが全体として特定の形を形成するように、流体中で動いている粒子が複雑な構造やシステムを自発的に作る場合があり、これらは自然界や生体内でも見られるため、近年注目を浴びています。しかし、流体中を動いている粒子の自己組織化については、流れを介した相互作用の複雑性のため、どのような機序によってこの現象が起きるのかはわかっていませんでした。

そこで、インド工科大学 マドラス校のヒリシケシュ バドラ 博士課程学生(研究当時:東京大学 工学系研究科 特別聴講学生)、東京大学 生産技術研究所の高江 恭平 特任講師、インド工科大学・マドラス校 マニ イタヤラヤ 教授、東京大学 田中 肇 名誉教授(現在:先端科学技術研究センター シニアプログラムアドバイザー)の研究グループは、2次元の流体中に浮かんだ、時計回り、反時計回りに回転する円盤を混合した系での相分離を、流れの効果を正しく取り入れた流体力学シミュレーションによって研究しました。2種類の円盤の数が同程度のときは、互いに反対方向に流れる帯状構造が、また両者の数が大きく異なるときには、無秩序な相の中に回転するドロップレットが形成されることが明らかになりました。

一般に、相分離は、サラダドレッシングで見られるように、小さな相分離構造が徐々に大きくなるという粗大化と呼ばれる過程を経ます。しかし、このような常識に反し、粗大化過程を経ることなく、無秩序な乱流状態から直接最大の構造を形成することを発見しました。同じような回転粒子混合系でも液体がない乾いた系においては、やはり粗大化を伴う相分離が観察されます。したがって、この異常な振る舞いは、液体の存在に起因しているはずです。詳細な研究の結果、この特異な相分離挙動は、2次元液体の乱流に特徴的な小さなスケールから大きなスケールにエネルギーが輸送される逆カスケード現象に起因することが明らかになりました。この発見は、乱流領域における流れの自己組織化に伴う、自己駆動粒子群の自発的な構造形成の新しいメカニズムを明らかにしたものと言えます。

本研究成果は、2022年12月27日(英国時間)に「Communications Physics」に掲載されました。


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