News Release

高磁場による金属プラズマの発生

材料プロセスの革新へ

Peer-Reviewed Publication

Toyohashi University of Technology (TUT)

金属直接励起プラズマ(AIP-advancesにてFeatured Article,2023)

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<概要>

豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系 教授 藤井 知及び東北大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 助教 福島 潤らは、液体やガスを使わず、マイクロ波共振器で形成される高磁場のみにより、固体金属から直接放出される金属イオンと電子によりプラズマが発生し、その維持ができることを発見しました(図1)。MgイオンやCaイオンはその内部エネルギーが大きいことから、金属酸化物の還元材として利用でき、従来に比べ、大幅な省エネルギー化を達成することができると期待されております。

本成果の論文は、AIPアメリカ物理学協会出版局AIP Publishingで1月31日に公開されました。

 

<詳細>

従来、プラズマや放電現象は、18世紀半ごろ、ライデン瓶の発明により、容易に高電圧を達成できるところから放電現象の研究が始まり、真空技術の進展とともに、グロー放電、さらに、高周波電源の出現により、安定なプラズマが形成できるまで至り、現代では、プラズマ技術は、車やプロジェクターのヘッドランプ、半導体デバイス製造における微細加工技術のプロセスのキー技術として、広く利用されています。ほとんどのプラズマ技術は、液体やガスをチャンバーへ導入し、高電圧や高周波により高電場が形成された場所で、その高電場により原子や分子を電離させ、さらに、イオンや電子の集団に高電場によりエネルギーを与え続けることでプラズマを維持するものです。また、高磁場の例は、核融合炉のトカマク型では高磁場によりプラズマの閉じ込め核融合反応に利用されております。今回、マイクロ波TM110モード共振器内では、中心軸上に高磁場が発生します。本論文では、金属を導入すると誘導電流が発生し、金属そのものが加熱され、その温度が融点の半分くらいの温度になると熱電子を放出し、さらに、金属原子を放出するようになります。電子は磁場により回転させられ、この電子が原子と衝突することで、放電が始まります。そして、プラズマは導体であることやプラズマ形成領域を二重石英管の内部の石英管の大きさに限定させていることから、高磁場からプラズマへエネルギーを供給可能な状態を原料が無くなるまで維持することを実現しました。なお、本発見に関連する知的財産権については出願中です。

 

<開発秘話>

当初、研究チームは、電場モードにより金属プラズマを発生させ、約1分程度金属プラズマを確認したものの、プラズマの維持時間が短く、金属プラズマを利用した還元反応には使えませんでした。還元反応は磁場モードの共振器でした。偶然、研究室にあったもう一つの磁場モード共振器を使うとプラズマが安定に維持できることを見出しました。本来、放電現象は、圧力と電場から示されるパッシェンの法則に従うことが示されています。真空度が高くなると本来プラズマは発生しませんが、本実験は、Mgイオンのゲッタリング効果により急激に真空度が高くなるため、パッシェンの法則とは違うものとなりました。また、高磁場による放電については、プラズマの教科書や学術論文での報告例がほとんどなく、今回発見した手法は非常に単純なものであるものの、初めての手法であり、ライデン瓶を使った放電実験から約250年後のもう一つの放電現象の発見ではないかと驚いています。

 

<今後の展望>

株式会社フルヤ金属と進めているNEDO先導研究プログラム「酸化スカンジウム 精錬技術の高度化に向けた装置開発と応用」の最終目標として達成しつつ、マイクロ波化学・工学の社会実装の成功例として取り組む予定です。

図2に示すとおり、さらに、この手法はレアアースやレアメタルの還元手法として適用でき、材料分野での革新を起こすことができると期待しています。

また、最新半導体製造プロセスでは、多くのプラズマが使われており、本論文の手法によるプラズマを活用できる可能性があると考えております。これらは先導研究の研究成果として政府研究開発プロジェクト(国プロ)へと提案していく予定です。

 

<論文情報>

S. Fujii and J. Fukushima " Metal ion plasma generation under strong magnetic field in microwave resonator" AIP-Advances, featured article,  doi.org/10.1063/5.0134071.

 

<謝辞>

本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けて実施されました(JPNP0622001)。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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