東京大学 生産技術研究所の吉兼 隆生 特任准教授と芳村 圭 教授は、低解像度の気候モデルシミュレーションから高解像度の降水特性を推定するための機械学習を用いた手法を開発しました。現状の気候モデルシミュレーションでは、対応が困難である、地域詳細の降水特性の推定を可能にします。
降水の気候特性は、地形など局地的な要因の影響を強く受けて地域ごとに大きく異なります。そのため、洪水など水災害リスクや水資源量の気候変動を予測するためには、地域詳細の降水特性を再現する必要があります。一方、数値モデルにより気候変動を再現するためには、長期間の気候モデルシミュレーションが不可欠です。しかし、気候モデルシミュレーションを高解像度で実施するには膨大な計算機資源を必要とするため、現状では局地降水の気候変動特性を推定することが困難でした。
そこで、以前に開発した広域での降水空間分布特性と局地降水との関係性を機械学習でパターン認識するモデルバイアス補正手法を応用して、低解像度の気候モデルシミュレーションを高解像度化する手法を開発しました。高解像度化により局地降水の気候特性(頻度、月降水量、強雨)が再現可能であることを示しました。
さらに3,000年分の気候モデルシミュレーションから高解像度化された降水推定値を解析することにより、近年の梅雨期の降水の気候変動特性を明らかにしました。観測結果との比較から、過去60年間の降水頻度、強雨は、温暖化による影響よりも自然変動の影響が極めて大きいことが分かりました。洪水などの深刻な水災害を低減するためには、温暖化による影響だけでなく地形等の局地的要因や様々な気象現象の相互作用による降水強化のメカニズムや特性を解明することが求められます。
Journal
Scientific Reports
Article Title
A downscaling and bias correction method for climate model ensemble simulations of local-scale hourly precipitation
Article Publication Date
9-Jun-2023