News Release

気候モデリングでホミニンの移住と進化について新たな知見が示される

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

2本の研究で、気候モデリング手法がホミニンの進化と移住に関する私たちの理解不足をどう補えるかが実証された。

 

この数十年で、ホミニン ―― ヒトとその近縁種祖先 ―― の生活について研究する取り組みは、化石と人工遺物を特定することから、彼らが生活していた環境や気候の状況、そしてそれらの要因が彼らの進化と移住にどう影響したかを解明することへと移行してきた。しかし、ホミニンの化石記録と同様に、環境の変化を正確に捕えるとともにホミニンが進化して世界各地に広がった期間の環境と気候の記録は希少で、不完全でもある。こういった限界には、先進的な分析ツール、とりわけ進歩した気候および生態系モデルで対処できるものもあり、それによって不足分を補って、ホミニンの移住について有益な新しい知見を得ることができる。

 

1つ目の研究ではVasiliki Margariらが深海底堆積物コアを使用している。これは80万年から180万年前のヨーロッパの気温記録を示すもので、彼らはこのデータを用いて気候エンベロープモデルを作成し、気温や降水量といった気候変数を使ってホミニンが生息した地理的範囲を検討した。そして、110万年前まで地中海一帯にホミニンが生息していたことを確認した。その時期は長く安定した間氷期と短い氷期を特徴としており、それがホミニンの定着と長期にわたる占有を可能にしたと考えられる。しかし、110万年前頃に極端な氷期状況が始まり、地中海地域の寒さはホミニンが生き延びるには厳しすぎるようになった可能性が高い。Margariらは、これらの極端な状況によってヨーロッパでは人口が減少し、氷期 - 間氷期サイクルの数回はその状況が続いたと推測している。

 

もう一つの研究ではJiaoyang Ruanらが、更新世におけるユーラシア中央部一帯の気候変動によってデニソワ人とネアンデルタール人の交雑がどのように促進されたかを検討している。遺伝学的研究によって、ユーラシアでのネアンデルタール人とデニソワ人の交雑のエビデンスは明らかになっている。しかし、これらの混合イベントについては依然としてほぼわかっていない。Ruanらは今回、広範囲に及ぶ化石、考古学的および遺伝学的データに、大気海洋結合大循環モデルによる地球気候の過渡状態のシミュレーション、過去40万年の生息域の変化を組み合わせた種分布モデルを開発し、それを使ってネアンデルタール人とデニソワ人の生息地についての嗜好を特定した。どちらの種も様々な環境に生息していたが、ネアンデルタール人は温帯林を好み、一方デニソワ人はもっと広い地域に生息していたことを、Ruanらは発見した。しかし、軌道変化による生息地の気候変動で、デニソワ人とネアンデルタール人が好む生息地域が重なり、これら2種は交雑の機会を得ることになった。

 

この動向に関心のある記者の方は、2023年5月にScience誌に掲載された研究、Zellerらが用いた同様の地球システムモデルを基にした手法をご覧下さい。その手法では気候と化石のデータセットを組み合わせて、更新世のホミニン複数種の生息地の適合性と嗜好、および、彼らがこの300万年の間、気候の変化にどう反応してきたかを評価しています。


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