新しい研究により、アメリカ人にとって健康と身体的健康に関する人種格差は、経済などの他の要因に関する人種格差より、社会変革のための活動を起こす動機になりやすいことが判明した。なぜなら、健康に関連する人種的不平等の方が不当感が大きいと認識されているからである。この研究結果は、道徳的不公平感を引き出すために人種格差をフレーミングすることが政策改革の動機となりうることを示唆しており、人種的不平等の軽減を目指す活動に支持を得ようと努める政策立案者、社会運動、及び国民の関心を引くと思われる。「本研究は、身体的な欲求と安全の侵害が変革を求める民間運動の強い決定要因になりうる理由の解明に役立つ」と著者らは書いている。米国では日常生活の多くの場面に人種格差が浸透している。例えば、アフリカ系アメリカ人は財産、健康、社会的帰属といった様々な分野で不相応にネガティブな結果を経験している。しかし、これらの格差の軽減に必要な政策への支持を集める取り組みは、限定的な成果しか上げていない。社会変革を求める運動 ―― とりわけ、ミシガン州フリントの水道危機やブラック・ライブズ・マター運動といった周縁化されたコミュニティに影響を与えるもの ―― は、社会の主流の注目を集める特定の出来事によって、促進されたり、維持されたりすることが多い。人は多くの場合、不当若しくは不公正と思う状況に対抗する活動を支持することは研究によって示されているが、どういった類いの人種格差が変革のための支持を最も上昇させるかは依然としてわかっていない。Brownらは、ランダムに割り当てられたアメリカ人のグループが、健康、経済問題、社会的帰属における人種格差についての情報にどう反応するかを評価する一連の実験を考案した。そして、経済や社会的帰属に関する格差より健康に関する格差についての情報の方が変革活動への支持を高め、格差軽減に向けた政策に対するより高いソーシャルメディアエンゲージメントや支持につながることを発見した。Brownらによると、これらの効果は、健康と身体的健康における人種格差の方が不当感が大きく、「道徳的に聖なる価値」も侵しているという認識による部分があるという。関係するPerspectiveではAllison EarlとVeronica Derricksが、Brownらの研究について説明するとともに、「人種間格差に対する活動の動機付けになる不公平の認識」を強調している。
Journal
Science
Article Title
Highlighting health consequences of racial disparities sparks support for action
Article Publication Date
22-Dec-2023