低・中所得国(LMIC)で、患者の好みに関する医療提供者の思い込みにより、小児の下痢治療に生命を救う経口補水剤(ORS)が十分に利用されていないことが、新たな報告で示された。この知見は、患者のORSの好みに関する医療提供者の認識を変えるための介入が、世界的なORSの利用の促進と下痢による小児死亡率の低下につながる可能性があることを示唆している。OHSは小児の下痢に対して広く利用でき、有効性が高く、コストの低い治療である。しかし、下痢がLMICの小児の死因の第二位であり毎年約50万人の5歳未満の小児が下痢により死亡しているにもかかわらず、さらには医療提供者の大多数がORSが生命を救う治療であることを知っているにもかかわらず、OHSを処方する医療提供者はほとんどいない。例えば、小児期の死因の約4分の1が下痢であるインドでは、ケア提供者の75%以上が民間の医療機関を受診するが、そのうち45%はORSによる治療を受けていない。この「Know-Do」ギャップの原因を理解できれば、数百万人もの小児の命を救うことができる可能性がある。Zachary Wagnerらは、このギャップの根底にある要因を特定するために、インドの253都市で民間医療提供者2,282名を対象として複数の無作為化対照試験をデザインし実施した。試験では、訓練を受けた俳優に、下痢の2歳児の治療を求める父親を演じるよう依頼した。Wagnerらは、ORSの利用を阻む以下の3つの障壁を発見した:患者がORSに関心がないという医療提供者の思い込み、抗菌薬などの不適切だがお金がもうかる薬剤を処方したいという動機、ORSが在庫切れしている際にORS以外の代替品を売りたいという動機。知見によれば、患者の好みに対する医療提供者の認識がORSの不十分な処方に最も影響を与えており、患者がORSを使用することに関心がないという思い込みが、ORSの不十分な処方の原因の42%を占めていた。金銭的な動機と在庫切れはそれぞれ原因のわずか6%および5%であった。患者がORSの処方を求めた場合は、ORS処方の可能性が2倍に上昇した。これらの知見により、患者の最善の転帰を得るために、医療提供者の認識を変える介入が重要であることが明らかになった。
Journal
Science
Article Title
What drives poor quality of care for child diarrhea? Experimental evidence from India
Article Publication Date
9-Feb-2024