News Release

ある遺伝子のちょっとした変化が花の腐敗臭の元

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

甘い香りではなく腐ったような悪臭で、花粉媒介者をおびき寄せる植物がある。新しい研究で植物がこれをやってのける仕組みが明らかになった。カンアオイ属の花では、一般的に悪臭のする化合物の解毒に使われる遺伝子が解毒ではなく嫌な臭いを発生するように進化したと、研究者らは報告している。この研究結果は、生態学的優位性のために植物が広く保存された代謝経路をどのように選択するかの解明に役立つ。悪臭を放つ花の大きな特徴は、嫌な臭いのする揮発性化合物、特にジメチルジスルフィド(DMDS)やジメチルトリスルフィド(DMTS)のようなオリゴスルフィドを放出することである。こういった化合物は、物質を腐敗させることで発せられる化学シグナルを模倣している。これらの化合物が含硫アミノ酸の細菌分解に由来することは知られているが、花がこれらを作り出せる生物学的メカニズムはほぼわかっていない。これを探究するために、奥山雄大はカンアオイ属の花について研究を行った。この属の花は形態も香りも非常に多様で、こういった特徴は様々な昆虫花粉媒介者をおびき寄せるために進化したと考えられている。

 

奥山らは、比較ゲノミクスと機能アッセイを通して、花からのDMDS放出はセレン結合タンパク質ファミリーの遺伝子の発現と関係があることを発見した。ヒトにおいては、関連タンパク質であるSELENBP1が通常メタンチオール ―― 病的口臭の原因である強い悪臭を持つ化合物 ―― を解毒する。SELENBP1がメタンチオールをより害の少ない物質に変えて解毒するのである。奥山らは、カンアオイ属で型の異なる3つのメタンチオールオキシターゼ遺伝子、SBP1SBP2SBP3を発見した。彼らは、これらの遺伝子を細菌内で発現させ、その酵素機能を検査することで、SBP1が独自の反応を示すことを発見した。メタンチオールを解毒するのではなく、DMDSに変えるのである。この能力はSBP1の少数のアミノ酸変化によって生じたもので、それによりSBP1の酵素機能がメタンチオールオキシターゼ(MTOX)からジスルフィドシンターゼ(DSS)に変わった。これは少なくとも3つの無関係な植物系統で別々に進化したと考えられ、類似する生態学的圧力によって引き起こされた収束進化を指している。関係するPerspectiveではLorenzo CaputiとSarah O’Connerが次のように書いている。「特筆すべきは、祖先からの酵素活性であるメタンチオール酸化はヒトでも観察されているが、酵素によるオリゴスルフィドシンターゼ活性は植物でしか進化しなかったことである。これは、植物が絶え間ない進化的圧力を受け、コミュニケーションと防御のための複雑な化学的性質を生み出しているためと考えられる。」


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