新しい研究によると、齧歯類の目立たない「親指」は紛れもない進化への窓だとは思えないかもしれないが、その角化した先端部 - 爪(蹄、鉤爪、扁爪) - から齧歯類の歴史や適応について驚くべき知見が得られたという。この発見により、齧歯類の進化の成功の大半は親指(第1指、D1)の扁爪のおかげ、種子や木の実を割るための器用な手を作り出した適応であることが示された。四足類(四肢脊椎動物)の手は環境との相互作用に不可欠な構造で、その指には形態的にも機能的にも大きな進化的多様性が見られる。その中でも、第1指 - D1 - は特に興味深い。D1は、発達過程では最後に現れ、進化においては最初に縮小若しくは消失し、霊長類のような一部の系統では、D1があることでつかんだり、登ったりというような器用な動きが可能になる。しかし、爪についての詳細な研究は少ない。最も種類豊富な哺乳類である齧歯類は、D1に扁爪や鉤爪があることもあれば、爪がまったくないこともある。しかし、この変異の進化パターンと機能的意義はほとんど解明されていない。
Rafaela Missagiaらは今回、高度な系統種間比較法を用いて齧歯類におけるD1の爪のタイプの多様性、進化の歴史、行動との相互関連を体系的に調査し、鉤爪ではなく扁爪が最も一般的で、また、祖先においてはおそらくその状態であったことを発見した。化石証拠により、齧歯類は少なくとも漸新世から扁爪のようなD1を持っており、このことは、齧歯類の長年にわたる特徴であるとともに、関係する哺乳類目の中で独自の形質でもあることが示された。Missagiaらによると、齧歯類のD1の扁爪は物をかじるための特徴的な門歯と共進化し、木の実のような硬い食べ物を器用に扱えるように助けており、こういったことが齧歯類の初期多様化期において重要な生態学的利点であったと考えられるという。D1に鉤爪のある齧歯類とD1に爪のない齧歯類は特殊な系統で後に現れ、特定の行動を助けたと考えられる。鉤爪は土の中や穴にすむ系統で、爪の喪失は手を使うよりも口から摂食することに大きく依存する系統に見られた。
Journal
Science
Article Title
Evolution of thumbnails across Rodentia
Article Publication Date
4-Sep-2025