News Release

米国西部の山火事による熱が東部の大気汚染に及ぼす影響の分析

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

新たな研究によると、山火事が大気質に及ぼす影響を探るほとんどの気候モデルは、ある場所で発生した火事による熱が、遠く離れた場所での気象パターン、ひいては大気質の変化に及ぼす影響を見落としているという。本研究の著者らは、米国西部における山火事は、西部では大気質を悪化させている一方で、逆説的だが、東部では大気質を改善している可能性があると報告している。ここ数十年、米国西部における山火事は頻度と激しさが増しており、その際に放出される大量の煙が、その地域においても、はるか風下の地域においても、大気質を大きく低下させている。山火事由来の微小粒子状物質(PM2.5)による汚染は、山火事の煙が西部から東へ流れると悪化するとされ、米国東部では長年にわたり健康上の主要な懸念事項となっており、毎年数千人の早期死亡に関与しているとも考えられている。この通説は、長年にわたり全国的な大気質や山火事管理の政策に影響を与えてきたが、一方、山火事によって放出される強烈な熱は、気温を変化させ、大気を不安定にし、強い対流を引き起こしうるにもかかわらず、十分には理解されていない。山火事の熱は大規模な大気循環を変化させるという理由から、遠方の大気質を形成するうえでの影響は過小評価されてきた。ほとんどの気候モデルは、煙の排出量のみを考慮し、火事の熱は考慮していない。山火事による東部の汚染を過大評価しがちな理由を、これで説明できるかもしれない。

 

Qihan Maらは、観測データと、毎日の熱測定値を組み込んだ気候モデルシミュレーションとを用いて、西部で極端な山火事が発生している間、東部では、極端な山火事の最中だけでなく山火事シーズンを通して、PM2.5が実際に減少することを見出した。これは、大規模な山火事によって放出された強烈な熱が強い対流を引き起こし、それが気象パターンを変化させ、東への煙の輸送を抑制し、大気の浄化を助ける降雨を促進するからである。しかし、東部では山火事の熱によって大気質が改善している一方で、西部では依然として山火事によって汚染が悪化している。Maらによると、現行の気候モデルで山火事の熱を無視した場合、全国の健康と経済に及ぼす影響の推定値が、早期死亡者は約1,200人、損害額は33億ドルにまで膨れ上がるという。この結果から、地域の大気質と環境の公平性を築くうえで、その役割を自覚した政策が必要であることが明らかになった。「山火事はさまざまな影響を及ぼすことから、山火事管理と地域の汚染防止のためには、より適切な資源配分と政策強度が必要になる」と著者らは述べている。「温暖化によって世界で緑化が進むと、燃料が蓄積され、山火事発生時の熱の放出量が増えることになる。包括的な気候シミュレーションや山火事のリスク評価を行う際には、地球システムにおける山火事の熱を考慮することが不可欠である」。関連するPerspectiveでは、Yun Qianが、本研究とその研究結果の意味するところをより詳細に論じている。


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